電力不足の主な要因は「火力発電の縮小」

過去にも厳しい暑さが続く夏はあったが、これほど電力供給が深刻な状況になることはなかった。今回、電力の供給が不安定になった背景には、火力発電による電力量減少の影響が大きいとされている。

日本の電力を発電方式別に見ると、最も割合が大きいのは火力発電だ。2021年に国内で発電された年間電力量における火力発電の割合は71.7%と最も高い割合を占めている。しかし、2015年時点では全体の85.7%を火力発電が占めていた。僅か6年の間に14%も減少しているのだ。

火力発電が縮小している理由には、世界的な脱炭素化への動きや、発電所の老朽化が挙げられる。特に老朽化は深刻で、国内の火力発電所は稼働開始から40年以上が経過しているものが多い。古い設備はトラブルの発生が懸念され、稼働を停止させる電力会社も増えている。

また、2016年に施行された電力自由化を受けた、電力の取引価格低迷も影響している。火力発電は設備の維持・運営にかかるコストが他の発電方式よりも比較的高額だ。そのため、自由化によって競争が激化した現在の電力市場では、稼働しても採算が合わないと電気会社が判断し廃炉されるケースが増えてきている。

数値で見ると、ここ5年間で火力発電による電気供給力は540万世帯分に相当する1600万キロワット減少した。この大規模な縮小が、国内の電気供給に大きな影響を与え始めている。