個人投資家の株主数は増加するものの年々減る時価総額
「投資部門別株式保有状況」は、時価総額ベースのものです。つまり現在の株価と、保有している株数を掛け算して求められたものと考えて下さい。それによると、株主数ではあれだけ増えていた個人投資家が国内株式市場に及ぼす影響は、逆に年々後退していることが分かります。
2021年度における投資部門別株式保有状況は、以下のようになります。
政府・地方公共団体・・・・・・1兆1112億円(0.2%)
金融機関・・・・・・219兆4232億円(30.0%)
証券会社・・・・・・19兆9024億円(2.7%)
事業法人等・・・・・・146兆2915億円(20.0%)
外国法人等・・・・・・222兆3452億円(30.4%)
個人・その他・・・・・・121兆2022億円(16.6%)
カッコ内の数字は2021年度における上場株式時価総額である730兆2760億円に占める、投資部門別の保有比率になります。このうち、「個人・その他」の保有比率を過去に遡って見ると、1970年度が37.7%もありました。その後、「個人・その他」の保有比率は年々低下の一途をたどり、2021年度は16.6%となっています。それだけ国内株式市場における個人投資家の影響力が、年を追うごとに後退している証拠といっても良いでしょう。
ちなみに、他の投資部門についてはどうなのか、ということですが、1970年度との比較で言うと、「政府・地方公共団体」は0.6%が0.2%に低下、「金融機関」が31.6%から30.0%に低下、「証券会社」が1.3%から2.7%に上昇、「事業法人等」が23.9%から20.0%に低下、「外国法人等」が4.9%から30.4%に上昇、となっています。
もともと政府・地方公共団体は比率が低いので、影響力は小さいと考えられます。また証券会社も1970年度比で倍になったとはいえ、2021年度で2.7%しかありませんから、これも影響力は小さいと考えて良いでしょう。
金融機関と事業法人についてはやや低下していますが、これは金融機関別に見ると明暗が大きく分かれます。
たとえば「都銀・地銀等」の保有比率は31.6%から2.5%まで大きく低下しました。同じく「生命保険会社」も10.0%から3.0%に低下、「損害保険会社が」3.7%から0.9%に低下しています。これらについては金融機関と取引先企業との株式持ち合いの解消による影響が大きいと考えられます。
また金融機関のうち「信託銀行」については、1990年度の9.8%(それ以前の数字は都銀・地銀等に含まれており、信託銀行としての数字はなし)から2021年度は22.9%まで上昇していますが、この中身を見ると、投資信託が3.7%から9.9%まで上昇したのが影響していると考えられます。