ESG投資におけるパッシブ運用とアクティブ運用
他の一般的な投資と同様、ESG投資においてもやはりパッシブ/アクティブ問題に直面します。上述のESG投資の効果はあくまで指数ベースですが、指数は現時点でのESGスコアに基づいて構成されるため、指数との連動を目指すパッシブ運用は、すでにESGスコアが高い企業に投資することを意味します。つまり、企業のESGに対する取り組みの改善や変化までは考慮できていません。また、ESG指数に組み入れられることでその株式が買われ、すでにESGに対する情報が株価に織り込まれている可能性もあります。
このような状況では、高ESGだからと言って高いリターンにはつながるとは限りません。先進国のESG指数が親指数とあまり差がなかったのは、これで説明がつく可能性もあります。
一方、アクティブ運用にESGを取り入れれば、今はESGスコアが低いが、今後改善して株価が上昇する銘柄にも投資することが可能となります。実際、アライアンス・バーンスタイン(AB)のリサーチでは、ESGに対する評価が改善し、格付けが引き上げられた企業が超過収益を獲得していることが明らかになりました。逆に、ESG格付けが引き下げられた企業の超過収益はマイナスになっています。アクティブ投資全般に言えることですが、ESGについてもその変化を捉えられれば、リターンが上積みできる可能性があるのです。
ここまでESG投資の観点から、パッシブ運用とアクティブ運用について簡単に整理しました。まとめると、現時点でESGスコアの高い企業は今後もESGを遵守し、それに基づいて今後も高い収益を獲得すると考えるならば、パッシブ運用で十分でしょう。一方、現時点ではESGスコアは必ずしも高くないかもしれませんが、改善が期待できる企業に投資を行うことで、社会的にインパクトを与えつつリターン的にも報われることを目指すならば、アクティブ運用が適切となります。もちろん、アクティブ/パッシブの選択においてはコストも大きな要因となりますが、それよりもこのような投資家のESGに対するスタンスが決め手になると思います。