〈前半のあらすじ〉

子どもの頃からずっとアイドルに憧れていた鈴木さん(仮名、18歳女性)は、ある日SNSでアイドルユニットのメンバー募集広告を見つけてオーディションを受けることに。

結果は「補欠合格」となるものの、担当者から「才能がある」「必ずサポートする」と言われ、本採用のためにはレッスンを受ける必要があることも告げられます。

すぐに決断しなければ「補欠」の権利が他者に渡ってしまうことに焦った鈴木さんは契約書に署名押印してしまい……。

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仕事もなく、親からもあきれられる

鈴木さんは契約後、アルバイトでためていたお金から契約金5万円と初月の所属料3万円の合計8万円を支払いました。

ところが、事務所から具体的なレッスンや入れる予定のアイドルユニットについての説明が一切ありません。

「どうなっているのですか? いつ頃レッスンが始まるのですか?」と尋ねたところ、「他のメンバーと調整している」「良いレッスン講師を準備しているから少し待ってほしい」と言われました。

1カ月が経過して所属料もさらに1カ月分支払いましたが、やはり一向にレッスンが始まりません。そのうち、事務所へ連絡を入れても返信が少なくなり、最終的には連絡をとれなくなってしまいました。

「もしかしてだまされたの?」と不安になって親に話すと、「そんな話は詐欺に決まっている」とあきれられました。

音信不通になったのですぐに引き落としを止めましたが、結果的に入会金や所属料の名目で合計11万円もだまし取られてしまったのです。

鈴木さんの場合、改正民法によって成人年齢に達しているので未成年者取り消しも適用できません。詐欺取り消しをしようにも相手の所在が分からず連絡方法もないので、泣き寝入りを強いられる結果となってしまいました。

若者を狙う「タレント・モデル詐欺」が増加

鈴木さんのケースのように、若者を狙った「タレント・モデル詐欺」が増えています。タレント・モデル詐欺とは、芸能人に憧れる若者をターゲットにして芸能事務所と契約させ、入会金やレッスン料などをだまし取る詐欺です。声優のアルバイトに応募したところ、詐欺に遭った事例もあります。

・オーディションに合格したので契約金を払ってほしいと告げるパターン
・不合格だけど「レッスンを受ければ売り出せる」と勧誘するパターン
・「他の企画に推薦したい」といって、契約締結を求めるパターン

上記のような手口が多数です。しかし契約してお金を払っても実際に売り出しはしてもらえません。お金をだまし取られるだけなので、安易に契約書へ署名押印しないよう注意しましょう。