相談者の角田佳代子さん(仮名)は、関東の某所に暮らす55歳。行政書士として開業しています。夫の俊明さん(56歳・仮名)は、有名大学を出て、ITエンジニアとして都内の上場企業に勤務していましたが、身も心も疲れきってしまい、佳代子さんに相談しないまま会社の希望退職に応募し、退職してしまいます。

3人の子どもの教育費により、あまり蓄えのない状況で、大黒柱の収入がなくなる事態……老後資金準備に不安を覚えた佳代子さんはFPに相談することに。

佳代子さんは安心して老後を迎えることができるのでしょうか? FPが具体的に検証していきます。

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角田家の家計や資産の状況

相談にいらした際の角田家の家計収支と資産状況は以下のとおりです。

佳代子さんの月収:約25万円
1カ月の生活費(夫婦2人分):約22万円
毎月の長男への仕送り:12万円
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長男の学費:年間130万円
預貯金(俊明さんの退職金含む):1800万円

俊明さんが退職金(約2200万円)を受け取った際に住宅ローンの残り約250万円を繰り上げ返済したため、住居費はほとんどかからなくなりました。

現状、角田家は長男への教育費の分がほぼ赤字であることが分かります。一般的には、不足分には奨学金の利用などが考えられますが、「長女、次女に奨学金を利用させなかったのに、長男にだけ負担させることは避けたい」と佳代子さん。俊明さんは、教育費に退職金の残りを充てればよいと考え、実際すでに退職金のいくぶんかを学費に充てたそう。

現状、夫婦2人の生活費は佳代子さんの収入でまかなっています。住宅ローンがなくなったのでなんとか黒字をキープしていますが、余裕が全くありません。長男の大学卒業後はラストスパートで老後資金の準備をするつもりですが、それには本来、俊明さんの収入が欠かせませんでした。

しかし、俊明さんにフルタイムで働く意思はなく、セカンドライフ向けの軽めの仕事に就きたいと考えているようです。