大企業を悩ませる「コングロマリット・ディスカウント」
東芝は家電製品のイメージが強いかもしれません。しかし実はエネルギーやビル設備、インフラといった業種の異なる多くの企業をグループに持っています。このように複数の産業を持つ企業グループを「コングロマリット」といい、大企業でよく見られる企業形態です。
しかし2021年11月、東芝は複数の事業を「インフラサービス」「デバイス」「東芝(資産管理会社)」の3社に分け、それぞれ独立した企業として再編すると発表しました(2022年2月には2分割案に修正)。背景には「コングロマリット・ディスカウント」があると考えられています。
コングロマリット・ディスカウントとはコングロマリット企業が過小評価される現象をいいます。例えば10億円の価値がある事業を5つ抱えるコングロマリット企業は50億円の価値があると評価されるべきですが、コングロマリット・ディスカウントが起こると50億円未満の価値しか認められません。
コングロマリット・ディスカウントは企業全体の分かりにくさが原因の1つと考えられています。各事業は評価しやすいものの、それらを組み合わせた相乗効果の評価が難しくコングロマリット企業が過小評価されやすいのです。
東芝は事業ごとに分割することで分かりにくさを緩和し、コングロマリット・ディスカウントの解消を目指しているのかもしれません。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。