「インフレは忘れたころにやってくる」と言われることもありますが、2021年の状況はまさにそれが現実になったのではないでしょうか。アメリカでは2021年に入り、新型コロナウイルスで生じた供給網の寸断やタイトな雇用環境からくる賃金上昇を主因としたインフレ懸念が高まっていましたが、年後半にはその上昇が加速し、いよいよその懸念がリスクとして顕在化しつつあります。加えて、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで、エネルギーや素材の価格が高騰し、さらなるインフレの可能性に世界中が身構えています。
インフレは資産運用にマイナスの影響を及ぼす
もちろん、米連邦準備理事会(FRB)をはじめとする各国の中央銀行の使命は物価を安定させることですから、今後はそのための政策が総動員されると思われますが、インフレ抑制策を実施しても、今よりも高いインフレになる可能性もあるでしょう。そうなったら、万年デフレ(ディスインフレ)状態だった日本もその影響を免れることはできません。
実際、この寄稿を書いている2022年3月時点で、インフレは生活のさまざまな面で影響が出はじめています。最もダイレクトな影響はガソリン代でしょう。そして原油や天然ガスを燃料とする電気やガス料金への影響も出てきています。
また、ロシアとウクライナは世界有数の穀倉地帯ですので、小麦などの価格も上昇しています。原料や燃料の値上げで企業の製造コストも上がりますから、さまざまな商品の小売価格も値上げせざるを得ない状況になっているのです。
ただ、これら生活に直結する値上げについてはメディアで報道されることが多く、皆さんも認識されていると思いますが、インフレが保有資産に与える影響についてはそこまで報じられていません。しかも残念なことに、インフレは資産運用にマイナスの影響を及ぼす可能性が高いのです。
そこで今回は、インフレが資産運用にもたらす影響を整理したいと思います。インフレに対応する際の考え方、そしてどのような資産がインフレ・ヘッジとして適切なのかを見ていきましょう。