いまさら聞けない! 金融政策の基本

ところで、なぜFRBは新型コロナウイルスの対応で利下げしたのでしょうか? また、なぜ今月は利上げをするのでしょう? 理由は、FRBは金利を上げ下げし景気や物価のコントロールを試みているためです。

金利は低いほうが経済にプラスです。低金利下では銀行に預けてもお金は増えにくいため使ってしまおうという気になりやすく、また利息の負担も小さいためローンも組みやすいでしょう。

つまり金利が低い状況は景気を刺激する効果が期待でき、FRBをはじめ各国の中央銀行はこういった動きを狙い利下げします。FRBが2020年3月に利下げしたのも、新型コロナウイルスによって低下する景気を押し上げようという狙いがありました。

こう聞くと「ずっと金利を下げておけばいいのでは?」と思うかもしれません。確かに金利の低下は景気を促す効果がありますが、利下げには物価の上昇という副作用もあります。景気が上向くと消費が促されるため需給から物価が上昇しやすいのです。

適度な物価の上昇(インフレ)は望ましいですが、物価が極端に上昇する「ハイパーインフレ」は経済に深刻な悪影響があります。例えばジンバブエでは2008年に年率2億%もの物価上昇が起こりました。現在100円のモノが来年には200億円になっている計算で、通貨の価値が2億分の1になることに等しいです。現地通貨のジンバブエドルは機能を失い、2015年に廃止されました。

このような極端な物価上昇が起きないよう中央銀行は金利を引き上げます。金利の上昇は預金を促しローンを抑えるため消費が低下し、結果的に物価に下落圧力が働きます。今月FRBで金利の引き上げが見込まれているのも、直近上昇している物価の上昇を抑制しようという狙いもあるでしょう。

ただし金利の引き上げは景気を冷やす副作用があります。景気を冷まし過ぎるケースもまた悪影響が大きいため利上げも簡単ではありません。中央銀行は金利を上下させ景気と物価がちょうどいい範囲にとどまるようバランスを取ることが仕事で、これを一般に「金融政策」といいます。

【金融政策の概要】