岸田政権は2021年11月の「新しい資本主義実現会議」において、未公開企業の上場方法の一つである「特別買収目的会社(SPAC)」の導入について言及した。

創業直後の企業でも短期間で上場できるとして、米国などで盛んに活用されているSPAC。一方で、投資家保護が十分になされていないとの指摘もあり、「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェットも警鐘を鳴らしている。今回はそんなSPACの仕組みや導入が検討されている背景、懸念点などを解説していく。

SPAC活用によるスタートアップ上場の仕組み

特別買収目的会社(SPAC)とは、株式未公開の企業や事業を買収することのみを目的とする企業だ。SPACが先に上場し、後からスタートアップなど非上場企業を買収、合併することで、買収先が上場企業として存続するというのがおおまかな流れ。SPAC自体は特定の事業を持たないことから「空箱」企業と表現されることもある。

最も活用が盛んな米国の制度では、おおむね次の5段階で手続きが進む。

①特定の人物(運営者)が自己資金でSPACを設立
②設立したSPACを上場、株式を発行して資金を調達
③買収先の選定・打診・交渉
④SPACの株主総会で買収について提案、株主の承認を得る
⑤買収完了。上場済みのSPACと統合したスタートアップも上場企業に

なお、上記の③ではSPACとスタートアップとの間で買収価格の合意形成も行われる。そこで双方の折り合いがつかなかったり、④の株主総会で買収が否決されたりした場合、買収は不成立となる。

また、設立から2年経過しても買収先を見つけられないSPACは解散。その場合、投資額のほとんどが投資家に償還される。