100年続く企業を目指し、社長の座を後継に
正直、ここでしおれるわけにはいきませんので、思い切って自分の立ち位置を変えてみようと思いました。私がセゾン投信の社長になったのが44歳の時です。そして、40代だった頃は誰からも言われなかったのに、50代に差し掛かってからよく言われるようになったのが、「早く後継者を育てた方がいいよ」ということでした。
読者の皆さんもご存じかと思いますが、セゾン投信は長期投資を標榜している投信運用会社です。ファンドを設定してからまだ14年しか経っていません。私はこの会社が今後50年、あるいは100年続くものになって欲しいと考えていますし、それが現実のものになるように、会社や運用ファンドの理念を固めています。
でも、これからセゾン投信のファンドに投資して20年、30年と運用していこうと考えている人にとって、私が社長として居座っているのは、やはり不安になると思います。人生100年時代などと言われていますが、今から30年が過ぎると、私も88歳になってしまいます。88歳で「セゾン投信の社長の中野です」なんて言っていたら、それはセゾン投信のファンドを保有している人たちにとっては、不安以外の何物でもないでしょう。
だから、社長の座を他の人に譲ろうと思ったのです。新社長として、園部鷹博を指名しました。私より12歳、若返ったことになります。園部はもともとプロクター&ギャンブルからさわかみ投信に移籍したという、なかなか変わった経歴の持ち主です。その後、ドイチェ・アセット・マネジメントという外資系の運用会社に移籍し、大阪で勤務していました。私は園部がさわかみ投信にいた頃から面識があり、長期投資に賭ける夢などいろいろなことを話し合いました。ドイチェ・アセット・マネジメントに移籍してからも交流が絶えることはなく、私が大阪に出張した時には、一緒に呑みに行ったりしたものです。そのような親交を深めていくなかで、園部にセゾン投信の社長に就任してもらうことを前提にして、セゾン投信に来て欲しいというオファーを出しました。
もちろん本人も考えるところはいろいろあったと思いますが、最終的には快く引き受けてくれました。こうして2018年10月、園部には事業推進部長として入社してもらい、2020年6月、代表取締役社長COO就任となったのです。そして私は、代表取締役会長CEOとして新たなスタートを切りました。園部と私の役割分担は明確です。今まで私が社長としてこなしてきたさまざまな経営者としての仕事は園部に任せました。
そして私は、社長だった当時では、あまりにも忙しくてできなかったことにチャレンジしていくことになります。それは、次のセゾン投信の価値を創っていくことです。つまり大きな経営方針を私が立案し、日々の実務は園部が実行していきます。