1.初めに

2021年は確定拠出年金(DC)法が施行されて20年目に当たる。人間でいえば20歳の成人式、節目の年になる。最近では、加入者数で確定給付企業年金(DB)を上回るなど、DCは大きく成長した。また、給付額でも一時金(老齢給付金)の1件当たりの支給額では、企業型DCはDBと肩を並べるなど、老後所得を支える重要な柱の一つとして認識も高まってきていると思われる。振り返れば長いようであっという間の20年であったが、ここに至るまでに多くの壁を乗り越えて、DC制度を育ててきた関係者の努力には衷心より敬意を表したい。

さて、存在感が増し、期待が大きくなる分、DC制度には「大人」として求められる責任も重くなる。例えば、制度運営の透明性やガバナンス、継続教育や運用商品の内容、加入者等の運用資産の比率、そして、いわゆる受託者責任の問題などである。また、期待値の高まりに合わせた拠出限度額の問題も指摘されている。

本稿では、20年の制度の歩みを簡単に振り返り、今後のDCの進むべき道や考えるべきポイントを述べてみたい。

2.DC制度改革と発展の軌跡

DC制度がスタートして以来、制度を実施する事業主や運営管理機関等の要望に配慮する形で、主に拠出限度額の拡大や使い勝手(手続き的な面での緩和措置)、教育(継続教育の明記)など、どちらかと言えば、漸進的な制度の改正がなされてきた。

大きく改革がなされて節目となったのは、2016年の制度改正だと思われる。この改正では、個人型年金(2016年9月より愛称がiDeCoに)の加入範囲の拡大やiDeCoプラスの創設、簡易型の企業型DCの創設など、制度を大きく拡充する施策が決まった。また、運用商品数の上限設定(35本まで)と商品除外の要件緩和、元本確保型の提供義務がなくなったことや、継続教育が努力義務化されたことなど、制度内容にも大きく踏み込んだ変更がなされた。さらに同年の改革では、事業主による5年に1度の運営管理機関の評価も努力義務とされ、制度運営にかかるガバナンスにも一定の配慮がされている。

このように、2016年の改正は、制度を拡充しながら、内容を深化させたという意味で、いわば「T」字型の制度改革であったと言えるだろう。

この「T」字型の改革は、2018年の運営管理機関による運用商品のインターネットを利用した公表や2020年のiDeCoプラスの実施規模の緩和(従業員100人以下から300人以下に拡大)、受給開始年齢の上限引き上げ(70歳から75歳へ引き上げ・2022年4月実施予定)、企業型・個人型の加入可能年齢の拡大(2022年5月実施予定)など、引き続き行われていると認識している。

これらの一連の改革はDC制度の拡大と充実を目指しており、その後のDC制度に大きく影響しているといえるだろう。