なぜ金融機関の営業にノルマが課せられるのか

では、なぜノルマが必要なのでしょうか。ノルマを完全に無くせば良いのでしょうか。ここがとても難しいところで、実は金融機関の営業に課せられるノルマは、日本に限った話ではありません。外資系金融機関にもノルマは存在します。

しかも外資系金融機関の場合、営業成績が悪いとクビを言い渡される恐れがあります。自分が仕事を失わないようにするためには、絶対にノルマを達成しなければなりませんし、なおかつ他の営業担当者よりも高いパフォーマンスを上げ続けることが求められます。

もっとも、ノルマを課して営業担当者を走らせるのは、金融業界に限った話ではありません。自動車の販売ディーラーに勤める営業担当者にも、「今月はこの車を何台売れ」といった類の目標値は必ず設定されます。営業現場でノルマが課せられていないところの方が、むしろ少数かも知れません。販売の数値目標が無かったら、恐らく人間は仕事をしなくなります。営業の現場で働く人たちにとって、ノルマを課せられるのは当たり前のことであり、それが営業担当者にとって、会社への貢献度を図るものとして一番明解な基準であるのも事実です。少なくとも金融機関がボランティアやNPO組織でない限り、成果に対するインセンティブは必要不可欠ですし、インセンティブを付与するには、それなりの達成すべき数値目標が必要になります。

本来なら営業担当者一人一人が自分自身で目標を掲げ、その達成度合いで評価するべきなのでしょうが、自分に甘い目標を立てられると、今度は企業の業績が伸びなくなります。営業現場のやる気を引き出し、かつ顧客本位であり続けるのは、とても難しいことですし、そういうマネジメントを実現するための最適解を見出すには、まだ時間がかかるでしょう。その難題にチャレンジしている金融機関もありますが、当面は試行錯誤が続くものと思われます。

ということで、金融機関のノルマ営業が完全に無くなることはないのかも知れませんし、無くなるにしてもまだ当分、先の話だと思います。投資をするにしても、何にしても、まだしばらくはノルマに追われ、その消化のことしか頭にないような金融機関の営業担当者と対峙していかなければなりません。

ですから、金融機関のノルマ営業から自分の大事な資産を守るためには、個々人が金融リテラシーを高めていくしかありませんし、金融機関の営業担当者が金融商品・サービスを勧めてきた時は、その行動の裏側に、「ノルマを課せられていやいや販売している」という現実があることを頭の片隅に置きながら、話を聞く必要があるのです。