環境(E)や社会(S)に関する具体的な内容も明記された

では今回の改訂で注目すべき点は何だろうか。東京証券取引所の上場部長、林謙太郎氏は、主要な見直しのポイントとして①サステナビリティ、②ダイバーシティ、③取締役会の機能発揮の3点を挙げ、改訂にあたって開催されたフォローアップ会議においても、「攻めや守りもさることながら、変化への対応が何より重要な局面」といった議論が展開されていたと、その背景を語っている。

東京証券取引所 上場部長
林 謙太郎 氏

2015年にCGコードが策定された当初は、日本企業に国際競争力を取り戻してもらうための「攻めのガバナンス」に主眼が置かれていたが、その後、企業の会計をめぐる不祥事が相次ぐ過程で、監査体制など「守りのガバナンス」の重要性も指摘される。それらを踏まえて改訂の議論が行われている最中に、多くの企業が新型コロナウイルスの感染拡大という想定外のリスクにさらされた。

「コロナウイルスにより人々の移動やコミュニケーションのあり方が激変し、変化に適応できなければ持続的な成長や中長期的な企業価値向上は望めません。そして、そのためには経営陣の意思決定がより一層重要で、それを支える取締役会の機能強化が欠かせないという認識が広まった」と、林氏は言う。

①サステナビリティについては、コロナ禍によってESGの重要性にますます関心が集まっているが、今回のCGコード改訂にも環境(E)や社会(S)に関連する事項が盛り込まれている。「2015年の初版の時から『基本原則2:株主以外のステークホルダーとの適切な協働』という項目で、サステナビリティにも言及されていました。ただし今回の改訂では、サステナビリティとは何を指すかについて、さらに踏み込んで明記されたことが大きな進歩ではないでしょうか」と、黒田氏は指摘する。

実際、基本原則2の中の補充原則2-3①には、「取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題と認識し……」と具体的に記載されている。サステナビリティといえば、これまで気候変動などEの問題に関心が集まりがちだったが、コロナ禍で急速に関心が高まってきたSに関連する課題にも対応が求められているのだ。もちろんEについても、改訂版ではより高いレベルの対応が求められており、新たにTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に関する記載も追加された。「基本原則3:適切な情報開示と透明性の確保」の項目に、「TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべき」と明記されている点などはその一例だ。

②ダイバーシティについては、補充原則2-4①に「上場会社は女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべき……」と記されている。

「昭和の高度経済成長の成功体験や、平成の失われた30年の喪失体験を引っ張ってきたのは、日本人の男性が中心となって組織された日本の会社です。令和の時代に変化への対応を実現していくためには、これまでとは異なる組織のほうが好ましいとの指摘もあり、日本人や男性に限らない多様な人材をいかに組織の中に統合するかが問われているのではないでしょうか」と、林氏は語っている。