iDeCo+導入によって、「私のiDeCo」はどうなる?

ただ、既にiDeCoを始めている方には、ちょっとした手続きが必要です。iDeCo+では、本人掛金と会社が上乗せしてくれるお金をまとめて入金していく必要があるので、積立方法を天引きに変更する必要があるのです。現在の積立が給与天引きになっている場合は良いのですが、ほとんどの方は、ご自身の銀行口座からの振り替えで積立されていると思います。ですから「加入者掛金納付方法変更届」という書類を提出する必要があります。

もうひとつ、拠出限度額の2万3千円を積み立てされている方の場合は、本人の掛金と会社が上乗せする金額の合計が2万3千円までと定められているので、会社掛金に応じて自分のiDeCoの掛金を減額し、その分つみたてNISAなど他の制度で積立をするように手続きする必要もあります。

時々「iDeCo+が導入されると会社がお金を上乗せしてくれるのはいいけれど、iDeCoの契約自体を会社が指定する金融機関(正確には、運営管理機関)にしなければいけない。そうなると、自分が気に入っている商品での運用ができなくなるし、積み上げた資産をいったん売却されてしまうから嫌」だと、おっしゃる方がいらっしゃるのですが、それは誤解です。会社にiDeCo+が導入されても、iDeCoの契約先、つまり、運用商品も変更することなく、単に積立額がプラスされる制度、これがiDeCo+です。

このようにiDeCo+は金融機関にとって、従業員全員を一網打尽にiDeCo顧客として囲い込むことができるわけではないので、積極的に取り組んでいる金融機関が少ないのが現状です。そんな状況ですから、2018年5月にスタートして3年あまりたった2021年6月末現在でも3,048の事業主、19,453名の加入者に留まっています。普及スピードは今ひとつ良くないのですが、私は中小企業が社員の老後資産形成を応援する仕組みとしてiDeCo+はとてもいい制度だと思っています。それは、冒頭申し上げたように、過度な負担を負わず中小事業主でも継続できる仕組みだからです。