空き家対策を一段と強める行政の動き

家が建っていれば住んでいなくても固定資産税などが軽減される※が、自治体が危険な「特定空き家」に指定し、改善するよう勧告すると、この特別措置がなくなる。ところが、京都市などは勧告をする前の段階で、独自にこの特別措置を外す動きに出た。
※住宅用地は、課税標準が特例で減額されるため

過疎化に悩む市町村のなかには、古民家のリフォーム、家賃の安い新居の提供、子供への福祉充実等で若手世代を呼び込んでいる。コロナ禍を契機とした、遠隔勤務の定着も幸いし、人口増加に転じた自治体も増加しており、空き家対策に貢献している。

国も手をこまねいているわけではない。相続後の遺族間での相続手続きの迅速化を促すことになった。今年4月、民法、不動産登記法の改正が行われ、土地の相続登記を義務化し、相続人が相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記・名義変更をしないと10万円以下の過料が課せられる。また、相続開始から10年がたっても、遺産分割協議が成立しない場合には、自動的に法定相続分による相続財産の分割が行われる。

同時に、「相続土地国庫帰属制度」を発足させた。売ることも無償譲渡でさえできなかった、空き家や空き地につき、最終的には国が引き取ることを明確にした。

ただ、そのための条件は厳しい。まず建物を自己負担で解体し、土壌が汚染していないことや埋蔵物がないことも確認する必要がある。審査手数料はもちろん、10年分の管理相当分を支払うことで土地を手放し、負の遺産から解放されることになる。 

この対策につき専門家の中には利用率は1%を下回るかも知れないと指摘する人もいる。しかし、条件を緩くすると、安易に空き家を手放す人が増え、公費負担が増す恐れもある。

一方、従来からすべての相続財産を引き継がない相続放棄という手段もある。司法統計によると、相続放棄は増加傾向が顕著で、2019年の相続放棄は約22万5000件と20年前の2.3倍にもなった。比較的容易な相続放棄とハードルが高い今回の「相続土地国庫帰属制度」をめぐって不公平感が高まると、国とのトラブルが生じる可能性も否定できない。

また、所有者が不明という土地も増加している。政府は年内にも対策をまとめるべく検討に入った。公共の目的で活用できる範囲を拡大し、小規模な再生可能エネルギー発電所や防災施設の設置も新たに可能にする方向だ。使用期限も現在の10年から20年間へと延長する意向だ。