――地政学的なリスクや金融政策の不確実性がくすぶる一方で、株式市場は足元で活況を呈しています。機関投資家と個人投資家の双方にとって、居心地の良さと悪さが同居しているような奇妙な状況と言えるかもしれませんが、2026年前半のマーケットをどのように総括できるでしょうか。
今年前半の株式市場のけん引役となったのは、少数銘柄に集中しながらも強力な押し上げ効果を発揮するAI関連のパフォーマンスと、中東情勢の混迷化に起因するエネルギー価格の動向、そしてそれに伴う金融政策の変化です。とはいえ、利益が特定の一部企業に集中していることや、金利の見通しが以前に比べて高止まりしていることから、もはや株式市場全体に対して過度に強気な姿勢を取れる状況にはないと考えています。
――AIブームは果たしてバブルなのかという問いに対しては、どのような考えを持っていますか。
AIによって世界経済や数多くの企業にもたらされる影響自体は、基本的にはポジティブに捉えています。しかしそれと同時に今後3~10年というスパンで見れば、株式市場の毎年のリターンが1桁台前半に低下し、弱気相場を迎える可能性が高いと見ています。これはAIがもたらす恩恵が、現在株価が高騰している少数の企業から、経済全体の幅広い企業へと波及していく段階に入ると考えているからです。
AI関連の取引に市場全体が支配される状況下では、アクティブ運用がインデックス運用に比べて苦戦する場面が続いていました。これからは、いよいよアクティブマネジャーのスキルが問われる時代になると見ています。一見するとAIに代替される商品やサービスであるかに見えても、例えばソフトウエアやデータプロバイダーといったセクターにおいて、実は顧客にとって不可欠かつ参入障壁の高いビジネスモデルを持ちながら、市場に見過ごされている企業は数多く存在します。そうした企業をいかに発掘できるかが、優秀なマネジャーにとって腕の見せ所の一つとなるでしょう。また、金利上昇とインフレを背景に、金融やエネルギーといったバリュー株にも大きな機会が生じ得ると考えられます。
――日本の株式市場は数年前まで予想もできなかった水準まで評価が高まっていますが、過熱感を指摘する声もあります。日本政府は「貯蓄から投資へ」のスローガンの下で投資活動を促進してきただけでなく、最近では戦略分野を指定し、資金供給を集中させる動きもあります。こうした流れは、銘柄選択のアプローチにどう影響しますか。
私たちは数年前から日本株に対して強気の姿勢をとってきました。日本にはもともと素晴らしい企業が多数存在していましたが、インフレへの移行とコーポレートガバナンス・資本効率の向上によって、市場の評価が改めて高まっています。
グローバル水準と比較すれば、日本株市場のバリュエーションは決して高すぎる水準とは言えません。前進しつつある企業を見つけ出し、経営陣の意思決定を手助けする取り組みを継続すれば、まだまだ多くの魅力的な投資機会を発掘できると考えています。
政府が投資を後押しし、国民の株式保有を増やす施策は、日本株市場全体にとって確かな追い風となるでしょう。加えて私たちは、政府や規制当局の動向が個別の企業や産業にどのような影響を与えるかを注視しています。政府の介入や戦略的投資がどこに向かうかを見極めることで、恩恵を受ける銘柄を先回りで特定できるからです。
――債券市場における投資機会をどう見ていますか。
過去数年にわたって株式からリターンを得てきた機関投資家・アセットオーナーは、環境の変化を受けて、今後は株式から債券へと資金を移動させていくと予想しています。投資家の見方はここ1年ほどの間に、「幅広い利下げ」から「インフレの高止まりを受けた利下げの休止、あるいは利上げ」へと大きく舵を切り、債券の利回り水準は長期的な観点から見て非常に魅力的になっていると考えています。日本のアセットオーナーが債券のエクスポージャーを持つ上では、例えば米国の課税地方債などは有力な選択肢でしょう。
足元ではスプレッドが全体的に縮小していますが、今後は一律的に拡大するのではなく、分野ごとに格差が生じると見ています。株式市場と同様に債券投資の分野においても、リアルタイムでリスクを判断・管理し、機動的にアロケーションを変更できるグローバルなアクティブマネジャーの存在が不可欠です。
――日本のアセットオーナー・投資家に向けてメッセージをお願いします。
現在は、市場の過度な集中に警戒すべき状況です。株式のベンチマークの驚異的な好調さがいつまでも持続可能だとは考えにくく、アクティブ運用がこれまで以上に存在感を高める時期がやって来ると考えられます。
パブリック市場とプライベート市場の比較も重要な論点です。これまでのように堅調な相場環境においては、パブリックの持つ「流動性」や「透明性」といったメリットは、あまり目を引きませんでした。足元では、ポートフォリオのうちプライベート資産の組入比率を高めるトレンドが見受けられます。しかし今後、リターンを得る難易度が上がりボラティリティが高まる時期には、再びパブリック市場の利点がクロースアップされるはずです。パブリック市場においてアクティブ運用を活用し、ポートフォリオをいっそう高度化できる余地があることを、ぜひ心に留めておいていただきたいと思っています。
