finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
年金運用から学ぶプライベートアセット投資の手引き

第5回:資産クラス編④ プライベートエクイティ【前編】

小倉 邦彦
小倉 邦彦
『オルイン』シニアフェロー 元 三井物産連合企業年金基金 シニアアドバイザー
2024.05.08
無料

PEの主流を占めるバイアウトは成熟・安定企業に投資

A氏:バイアウトはPEの主力のような感じですが実際はどうでしょう?

B氏:バイアウトは成熟期にある企業が投資対象になります。VCやグロースとの違いは株式の過半数を取得して経営権を握り、役員の派遣等で経営に深く関与することで企業価値の向上を図り、最終的には株式の売却または上場により利益を得るものです。

C氏:バイアウトは成熟期でキャッシュフローが安定している企業が投資対象になることが多く、PEの中では安定して高いリターンが期待できる投資形態なので、PE投資の主力になっています。

A氏:バイアウトファンドが経営権の取得にこだわるのはなぜでしょうか?

C氏:株式の過半数を取得せず経営権を持っていなければ、PEファンドがバリューアップのために人材や経営ノウハウを注入しようとしても、中途半端になる可能性があるからでしょうね。

A氏:バイアウトファンドの成功例は最近ではどのようなものがありますか?

B氏:国内企業に関わりが深い案件としては、日立製作所が2021年に約1兆円で買収して有名になったグローバルロジック社でしょうか。パートナーズ・グループのPEファンドとエクイティパートナーが共同でそれぞれ約45%を出資して2018年に同社株を取得し、3年後には企業価値ベースで5倍に高めることができたということなので、成功事例の1つですね。

A氏:すごいリターンですね。ところで、レバレッジド・バイアウト(Leveraged Buyout:LBO)という言葉もよく耳にしますが、バイアウトで用いられる手法なのでしょうか?

B氏:VCやグロースは少数株主の立場で出資するだけですが、バイアウトファンドは投資先企業の過半数持ち分を通じて経営権を取得するため多額の資金が必要になります。多額の投資資金の一部を出資ではなく外部借り入れで賄うことにより、他の案件に振り向けるための投資余力が残ることに加え、レバレッジ効果で投資効率が改善します。PEファンドのGPは投資家から高いリターンを期待されていることもありますが、自らの成功報酬を得るためにも投資効率を高めてファンドの運用成績を向上させる必要があるのです。

C氏:LBOの場合、ファンドは出資金だけにリスクを限定できるというメリットもあります。こうしたファンドのLBOによる借り入れの一部が、前回のテーマであったプライベートデット(PD)になります。貸し手となるPDのマネジャーは借入先が経営難に陥った場合に、PEファンドのGPによる追加出資を期待するところです。よほどのことがない限りは事業継続のためにGPが支援すると思いますが、これは約束されたものではないので、その時点でGPが投資資金の回収可能性をどう判断するかによると思います。

A氏:なるほどですね。ところで米国ではFRBの大幅な利上げによって、レバレッジを効かせたLBOにも何か影響が出ているのでしょうか?

B氏:そうなのです。前回のプライベートデット編でもお話ししたように、バンクローンのプライマリー市場低迷の影響で、PEのGPは20億ドル規模の大きな資金調達案件でもプライベートデットの一種であるダイレクトレンディングを選好するケースが増えています。

C氏:足元3カ月のTerm物 SOFRは5.3%にまで上昇していますが、ダイレクトレンディングでユニトランシェのスプレッドが700bpとすると、契約締結時に支払うコミットメントフィー(300bp程度)も考慮したオールインスプレッドは融資期間5年とすると750bpになり、仕上がりの金利は12.8%になってしまいます。ここまでデットの調達コストが上がってくると、一般的なPEの目標リターンであるIRR15%と大きな乖離がなくなり、レバレッジによるコスト低減効果が薄まってしまいます。規模にもよりますが、レバレッジをかけずにオールエクイティで手っ取り早く投資先企業を買収したほうがよいと考えるGPも出てくるでしょうね。

B氏:そこはCさんご指摘の通りだと思います。

A氏:それはプライベートデットにとって逆風になるのでしょうか?

C氏:GPも限りあるファンドの資金で投資を分散しないといけないので、全ての案件をオールエクイティというわけにはいかないでしょう。さらに金利が上昇すれば案件によってはそういうものも出てくるのでは、ということです。

財務課題を抱える企業に投資するディストレスト

A氏:PEのディストレスト(Distressed)投資とはどのようなものでしょうか?

B氏:文字通り破綻寸前の企業や破綻後に経営再建を目指す企業を投資対象とする戦略です。破綻寸前の企業の価値は大きく下落しているため、経営体制の改善や財務内容の健全化が進み、再生にめどが付けば企業価値は大きく回復するので、売却により大きなリターンを得ることができます。バイアウトのように株式の過半数を取得し経営権を握ったうえで、リストラを含む企業再生策に積極的に取り組んでいく場合もありますし、リスク分散の観点から少数株主の立場にとどまる場合もあり、ケースバイケースのようです。

C氏:一方で、企業再生がうまくいかなければ企業価値は大きく棄損するため、最悪の場合は倒産により株式が無価値になる可能性もあります。ハイリスク・ハイリターンの投資とも言えますね。

A氏:ドラマや経済小説に出てくる「ハゲタカファンド」もこれらの一種でしょうか?

B氏:以前はPEファンドが強引なリストラや事業の切り売りなどで短期的な利益を出して投資対象企業を売却、その後は事業の継続が困難になるケースが散見されたので、これらをハゲタカファンドなどと呼んでいましたが、今は経済小説の中の話でしょう。

C氏:昨今のPEファンドは短期的な利益を追求するより、時間をかけて事業をしっかり立て直し、最終的により大きなリターンを目指すというのが一般的な行動パターンですね。身近な例としてはリップルウッドによる日本長期信用銀行の買収などがあります。1988年に破綻して約8兆円の公的資金を注入された同行を10億円で買収し1200億円を追加出資、その後、新生銀行として再建させ2004年には再上場を果たしました。2005年の追加売却も含め再上場によりリップルウッドは約5000億円のリターンを獲得したと言われています。

A氏:旧長銀の債権が2割以上減価した場合には政府が簿価で買い取るという「瑕疵担保条項」の存在もあって、当時のマスコミは外資のリップルウッドに対して辛口でしたが、企業再生ファンドとしては成功事例だったようですね。

PEの主流を占めるバイアウトは成熟・安定企業に投資

A氏:バイアウトはPEの主力のような感じですが実際はどうでしょう?

B氏:バイアウトは成熟期にある企業が投資対象になります。VCやグロースとの違いは株式の過半数を取得して経営権を握り、役員の派遣等で経営に深く関与することで企業価値の向上を図り、最終的には株式の売却または上場により利益を得るものです。

C氏:バイアウトは成熟期でキャッシュフローが安定している企業が投資対象になることが多く、PEの中では安定して高いリターンが期待できる投資形態なので、PE投資の主力になっています。

A氏:バイアウトファンドが経営権の取得にこだわるのはなぜでしょうか?

C氏:株式の過半数を取得せず経営権を持っていなければ、PEファンドがバリューアップのために人材や経営ノウハウを注入しようとしても、中途半端になる可能性があるからでしょうね。

A氏:バイアウトファンドの成功例は最近ではどのようなものがありますか?

B氏:国内企業に関わりが深い案件としては、日立製作所が2021年に約1兆円で買収して有名になったグローバルロジック社でしょうか。パートナーズ・グループのPEファンドとエクイティパートナーが共同でそれぞれ約45%を出資して2018年に同社株を取得し、3年後には企業価値ベースで5倍に高めることができたということなので、成功事例の1つですね。

A氏:すごいリターンですね。ところで、レバレッジド・バイアウト(Leveraged Buyout:LBO)という言葉もよく耳にしますが、バイアウトで用いられる手法なのでしょうか?

B氏:VCやグロースは少数株主の立場で出資するだけですが、バイアウトファンドは投資先企業の過半数持ち分を通じて経営権を取得するため多額の資金が必要になります。多額の投資資金の一部を出資ではなく外部借り入れで賄うことにより、他の案件に振り向けるための投資余力が残ることに加え、レバレッジ効果で投資効率が改善します。PEファンドのGPは投資家から高いリターンを期待されていることもありますが、自らの成功報酬を得るためにも投資効率を高めてファンドの運用成績を向上させる必要があるのです。

C氏:LBOの場合、ファンドは出資金だけにリスクを限定できるというメリットもあります。こうしたファンドのLBOによる借り入れの一部が、前回のテーマであったプライベートデット(PD)になります。貸し手となるPDのマネジャーは借入先が経営難に陥った場合に、PEファンドのGPによる追加出資を期待するところです。よほどのことがない限りは事業継続のためにGPが支援すると思いますが、これは約束されたものではないので、その時点でGPが投資資金の回収可能性をどう判断するかによると思います。

A氏:なるほどですね。ところで米国ではFRBの大幅な利上げによって、レバレッジを効かせたLBOにも何か影響が出ているのでしょうか?

B氏:そうなのです。前回のプライベートデット編でもお話ししたように、バンクローンのプライマリー市場低迷の影響で、PEのGPは20億ドル規模の大きな資金調達案件でもプライベートデットの一種であるダイレクトレンディングを選好するケースが増えています。

C氏:足元3カ月のTerm物 SOFRは5.3%にまで上昇していますが、ダイレクトレンディングでユニトランシェのスプレッドが700bpとすると、契約締結時に支払うコミットメントフィー(300bp程度)も考慮したオールインスプレッドは融資期間5年とすると750bpになり、仕上がりの金利は12.8%になってしまいます。ここまでデットの調達コストが上がってくると、一般的なPEの目標リターンであるIRR15%と大きな乖離がなくなり、レバレッジによるコスト低減効果が薄まってしまいます。規模にもよりますが、レバレッジをかけずにオールエクイティで手っ取り早く投資先企業を買収したほうがよいと考えるGPも出てくるでしょうね。

B氏:そこはCさんご指摘の通りだと思います。

A氏:それはプライベートデットにとって逆風になるのでしょうか?

C氏:GPも限りあるファンドの資金で投資を分散しないといけないので、全ての案件をオールエクイティというわけにはいかないでしょう。さらに金利が上昇すれば案件によってはそういうものも出てくるのでは、ということです。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
次のページ その他PEの様々な投資形態について
1 2 3

関連キーワード

  • #プライベートアセット
前の記事
第4回:資産クラス編③ プライベートデット【後編】
2024.04.12
次の記事
第5回:資産クラス編④ プライベートエクイティ【後編】
2024.05.09

この連載の記事一覧

年金運用から学ぶプライベートアセット投資の手引き

第6回:プライベートアセット投資の心構え②~まとめとPA投資の将来像【後編】

2024.07.03

第6回:プライベートアセット投資の心構え②~まとめとPA投資の将来像【前編】

2024.06.27

第5回:資産クラス編④ プライベートエクイティ【後編】

2024.05.09

第5回:資産クラス編④ プライベートエクイティ【前編】

2024.05.08

第4回:資産クラス編③ プライベートデット【後編】

2024.04.12

第4回:資産クラス編③ プライベートデット【前編】

2024.04.11

第3回:資産クラス編② インフラ【後編】

2024.02.29

第3回:資産クラス編② インフラ【前編】

2024.02.28

第2回:資産クラス編① 不動産【後編】

2024.01.30

第2回:資産クラス編① 不動産【前編】

2024.01.26

おすすめの記事

「ピクテ・ゴールド」に続く高パフォーマンスファンドは? アイザワ証券の売れ筋にみる可能性

finasee Pro 編集部

毎月分配型解禁見送りと運用立国の「親離れ」――地銀は新強化プラン+口座付番義務化で”地域金融出先機関”に?
【オフ座談会vol.10:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部

浜銀TT証券の売れ筋で存在感を増す「イノベーション・インサイト 世界株式戦略ファンド」、「世界の実物資産中心」も好成績

finasee Pro 編集部

現状の貸倒引当金の問題点

岡本 修

⑪役員退職金の考え方(税法)【動画つき】

木下 勇人

著者情報

小倉 邦彦
おぐら くにひこ
『オルイン』シニアフェロー 元 三井物産連合企業年金基金 シニアアドバイザー
1980年三井物産株式会社入社。本社、広島支店、ドイツ(デュッセルドルフ)等にて経理、財務業務を担当後、1998年~2006年 本店プロジェクト金融部室長。 2006年~2009年 米国三井物産ニューヨーク本店財務課 GM。 2009年~2011年 本店財務部企画室 室長。 2011年~2013年 三井物産フィナンシャルサービス株式会社 代表取締役社長。 2013年~2017年 三井物産都市開発株式会社CFO。 2017年5月~2022年6月 三井物産連合企業年金基金 常務理事兼運用執行理事。 2022年7月~2023年3月 同基金シニアアドバイザー。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
毎月分配型解禁見送りと運用立国の「親離れ」――地銀は新強化プラン+口座付番義務化で”地域金融出先機関”に?
【オフ座談会vol.10:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【運用会社ランキングVol.2/販売会社一般編①】銀行・証券会社からの評価トップは2年連続でアモーヴァ・アセットマネジメント、新NISA2年目で変転期の投信市場が求める運用会社は?
足利銀行の売れ筋にみる「コア・サテライト」の投資戦略、新たな「コア」が期待されるファンドも登場
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
八十二銀行で「ゴールド・ファンド」が売れ筋トップ、国内株上昇で「ひふみプラス」もランクイン
浜銀TT証券の売れ筋で存在感を増す「イノベーション・インサイト 世界株式戦略ファンド」、「世界の実物資産中心」も好成績
野村證券の売れ筋で首位に定着する「グロース・オポチュニティ・ファンド」、さらに「半導体」「ゴールド」も追い上げ
「ピクテ・ゴールド」に続く高パフォーマンスファンドは? アイザワ証券の売れ筋にみる可能性
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【運用会社ランキングVol.2/販売会社一般編①】銀行・証券会社からの評価トップは2年連続でアモーヴァ・アセットマネジメント、新NISA2年目で変転期の投信市場が求める運用会社は?
足利銀行の売れ筋にみる「コア・サテライト」の投資戦略、新たな「コア」が期待されるファンドも登場
西日本シティ銀行の売れ筋ランクアップファンドに価格変動の洗礼、価格波乱なく堅調に推移するファンドとは?
【連載】こたえてください森脇さん
⑬若手の職員への教育が不足。効果的な方法は?
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
八十二銀行で「ゴールド・ファンド」が売れ筋トップ、国内株上昇で「ひふみプラス」もランクイン
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(3)アクティブファンドのモニタリング② α(アルファ)値とβ(ベータ)値
【文月つむぎ】証券口座乗っ取り被害ゼロへ 金融庁の新監督指針を読み解く
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
銀行・保険会社による暗号資産解禁案、金融庁がにじませた「躊躇」を指摘する声も。その理由とは…?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら