finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

金利復活で勢いづく債券販売 不十分な開示に当局がロックオン? 情報提供は「点より線」で

文月つむぎ
文月つむぎ
2024.03.07
会員限定
金利復活で勢いづく債券販売 不十分な開示に当局がロックオン? 情報提供は「点より線」で

金融庁は近年、投資信託などリスク性金融商品の販売会社において、顧客本位の業務運営がどの程度定着しているかモニタリングを行い、その結果を報告書にまとめ、6月に公表している。

昨年の報告書では仕組債販売に関し、リスクに見合うリターンが得られないものが多く、資産形成層向けの商品性として課題があるとし、商品性の見直しや他のリスク性金融商品との比較提案や全ての費用等の開示等を求めている。また、最近、仕組債に代わり販売額が急増している外貨建て一時払い保険についても、運用目的で販売したが、他のリスク性金融商品のリターン・コスト等の商品性に関する比較説明を行っていない事例などを挙げたうえで、販売増加の背景の一つに販売を推進する業績評価体系がうかがわれること、また、顧客ニーズに即した販売動向かを懸念する先が相応に存在していることを指摘している。

こうした中、先日、最近の顧客や販売会社の動きについて、金融庁幹部諸氏の所感を聞く機会があった。彼らのコメントを通し、筆者なりに注目点を整理してみた。

仲介コストの開示でさえ販社が消極的なワケ

まず、当局は、世界的な金利の復活を背景として債券販売が増加していることを踏まえ、各債券のコスト並びにリスク、リターンに係る情報を十分に顧客に提供出来ているかを気にしているようだ。近時、不適切な販売が散見された複雑な仕組債について、金融庁や日証協がコスト開示を進めるよう金融機関に働きかけているが、あまり開示が進んでいない。業界からは、海外の金融機関が組成することが多いため、情報を得にくいのがネックとなっているとの話が聞こえてくる。それならば、販売会社の仲介コスト(販売価格と仕入れ価格の差)だけでも開示が進めばよいのだが、事情通によると、組成会社が、戦略上、仲介コストの開示により仕入れコストが明らかになることを望んでいないため、仲介コストを開示する販売会社に対して商品提供を控えるのではないかと恐れ、販売会社がコスト開示に消極的になっているようだ。

また、同一グループの中で、組成から仲介まで一気通貫で行っている場合は、組成コストと仲介コストを調整し、例えば、組成コストを大きく確保しつつ、仲介コストを小さく設定するといったことが可能となる。よって、同じ商品提供において、仲介だけを行っている販売会社よりも、彼らの仲介コストを小さく見せることがいくらでも出来てしまう。これでは公正な競争が望めないとの声も聞こえるところである。こうした指摘があることは金融庁も耳にしており、従来以上に、外資系金融機関を含め債券の組成会社に対し、強くコスト開示を迫っているようだ。また、率先してコスト開示を行った社が不利益を被らないように、一斉開示が望ましいことも当局は重々承知しているようである。

情報開示は点ではなく「線」で

なお、当局は、債券取引において、こうしたコストのほか、リスクやリターンの情報が足りていないとも感じているようだ。債券購入時には、信用リスクや(外債の場合)為替変動リスク、金利変動リスク、流動性リスクや期待リターンを投資家に説明するとともに、顧客の属性やニーズに適うものであるか顧客と共に確認していると思われるが、はたして販売会社は販売後も、相場が変化する中、顧客ニーズに適うリスクやリターンにあるのか確認し、必要に応じ、顧客に注意喚起や対処策を提案しているのか。相場が急変し、評価損が一定の水準に達した時には連絡を入れているのだろうが、そうした一過性の「点」ではなく、継続的な「線」のフォローが顧客本位ではないか。当局の期待レベルが一段上がったように感じる。

こうしたコストやリスク、リターンの購入後のきめ細かな情報開示・情報提供が望まれるのは、何も仕組債などの債券取引に限った話ではない。株式や投資信託、ファンドラップ、貯蓄性保険、外貨預金、不動産投資など、あらゆるリスク性金融商品に言えることだ。なお、開示・提供を行う場合は、見せ方、伝え方を工夫する必要がある。例えば、購入後のリスクやリターンの状況については、銘柄毎に見せる方法もあれば、顧客のポートフォリオという塊で見せる方法も考えられる。現時点では、当局がどのような範囲・手法での情報開示・情報提供を期待しているのか定かではないが、特に、金利復活で、投資意欲が高まりそうな債券取引については、購入後も顧客の適合性確認を怠らないようにして欲しいとの思いを強く感じた。

また、当局は、顧客が商品毎にどの程度のリターンを享受しているのか、関心を深めているようだ。金融庁では、2018年に、「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPI」として「運用損益別顧客比率」を設定し、投資信託の販売会社に毎年3月末時点の自社の数値を積極的に公表するように求めてきた。2022年には、外貨建保険についても同指標の公表を求めるようになったが、さらに他の商品形態にも対象を広げ、顧客へのリターンの提供状況を確認しようとしている感がある。

投資信託の場合、複数の金融機関が分析を深め、口座開設年ごとに時系列で「運用損益別顧客比率」を算出し、口座開設年が古い(≒保有期間が長い)ほど、市場が変動する中でも安定的にリターンを享受していることを示し、顧客に対し、長期投資の効用を説くなど、当該指標が活用されている。一方、例えば、為替取引や(季節要因の大きい)農産物取引のように、主として短期間で損益を確定する商品の場合、その指標は、市場動向の影響を多分に受けるため、どの時点、どの期間、どの損益(実現損益、含み損益)を計測するかによって、数値はかなり変化する。また、ヘッジ目的で売買する場合は、ヘッジ対象商品の損益との合算でリターン評価を行うべきであろう。今後、対象商品を広げ、顧客のリターン状況の公表を目指すのであれば、当局も含め関係者は、商品特性に応じ、様々な角度から分析を行い、結果を分かりやすく伝える必要がある。

なお、販売会社において、主に短期売買により利ザヤを狙う商品を、マクロ・ミクロの目線での市場分析を基に市場動向を想定し売買を行う中で、腕を磨いていく顧客に対し提供し、顧客の収益機会の拡大に資することは十分意義があろう。仕組債もそうであるが、基本的に商品そのものに罪は無い。重要なのは、顧客属性やニーズに適う商品提供になっているかである。そのためにも、販売会社及び顧客自身が商品の顧客適合性を確認する上で、販売時及び販売後も、各商品の(特性やコスト、リスク、リターンといった)情報を分かりやすく、タイムリーに提供・入手することが求められるということであろう。

金融庁は近年、投資信託などリスク性金融商品の販売会社において、顧客本位の業務運営がどの程度定着しているかモニタリングを行い、その結果を報告書にまとめ、6月に公表している。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
前の記事
商品選びは「ご自分で」? かゆいところに手が届かぬ認定アドバイザー
ラストワンマイル支援へ既存アドバイザーと連携を
2024.02.07
次の記事
下げ相場で「喜ぶ」お客様を増やそう ~業界人が伝えるべき継続投資の極意~
2024.03.27

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】証券口座乗っ取り被害ゼロへ 金融庁の新監督指針を読み解く

2025.11.07

【文月つむぎ】片山さつき新大臣に贈る言葉

2025.10.28

【文月つむぎ】統合・再編議論の先は? 金融庁WGが照らす地域金融機関の未来

2025.10.20

【文月つむぎ】発足はいつ?高市政権下での金融機関の役割

2025.10.10

【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ

2025.10.06

【文月つむぎ】iDeCoがんばれ、NISAに負けるな! 
現状打破へ「7つの提言」

2025.09.22

【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント

2025.09.12

【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態

2025.08.29

【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは

2025.08.05

【文月つむぎ】「衆参とも少数与党」で通る法案は? 野党の「金融所得課税」に自民の「NISA拡充」でバランス取りも

2025.07.24

おすすめの記事

「ピクテ・ゴールド」に続く高パフォーマンスファンドは? アイザワ証券の売れ筋にみる可能性

finasee Pro 編集部

毎月分配型解禁見送りと運用立国の「親離れ」――地銀は新強化プラン+口座付番義務化で”地域金融出先機関”に?
【オフ座談会vol.10:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部

浜銀TT証券の売れ筋で存在感を増す「イノベーション・インサイト 世界株式戦略ファンド」、「世界の実物資産中心」も好成績

finasee Pro 編集部

現状の貸倒引当金の問題点

岡本 修

⑪役員退職金の考え方(税法)【動画つき】

木下 勇人

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
「ピクテ・ゴールド」に続く高パフォーマンスファンドは? アイザワ証券の売れ筋にみる可能性
足利銀行の売れ筋にみる「コア・サテライト」の投資戦略、新たな「コア」が期待されるファンドも登場
毎月分配型解禁見送りと運用立国の「親離れ」――地銀は新強化プラン+口座付番義務化で”地域金融出先機関”に?
【オフ座談会vol.10:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
八十二銀行で「ゴールド・ファンド」が売れ筋トップ、国内株上昇で「ひふみプラス」もランクイン
マン・グループの洞察シリーズ⑫
金に投資する意味とは何か
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
西日本シティ銀行の売れ筋ランクアップファンドに価格変動の洗礼、価格波乱なく堅調に推移するファンドとは?
野村證券の売れ筋で首位に定着する「グロース・オポチュニティ・ファンド」、さらに「半導体」「ゴールド」も追い上げ
【連載】こたえてください森脇さん
⑬若手の職員への教育が不足。効果的な方法は?
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【運用会社ランキングVol.2/販売会社一般編①】銀行・証券会社からの評価トップは2年連続でアモーヴァ・アセットマネジメント、新NISA2年目で変転期の投信市場が求める運用会社は?
足利銀行の売れ筋にみる「コア・サテライト」の投資戦略、新たな「コア」が期待されるファンドも登場
西日本シティ銀行の売れ筋ランクアップファンドに価格変動の洗礼、価格波乱なく堅調に推移するファンドとは?
【連載】こたえてください森脇さん
⑬若手の職員への教育が不足。効果的な方法は?
八十二銀行で「ゴールド・ファンド」が売れ筋トップ、国内株上昇で「ひふみプラス」もランクイン
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
毎月分配型解禁見送りと運用立国の「親離れ」――地銀は新強化プラン+口座付番義務化で”地域金融出先機関”に?
【オフ座談会vol.10:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
【文月つむぎ】証券口座乗っ取り被害ゼロへ 金融庁の新監督指針を読み解く
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
銀行・保険会社による暗号資産解禁案、金融庁がにじませた「躊躇」を指摘する声も。その理由とは…?
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら