――人的資本経営の話に入る前に、そもそも「人的資本」とはどういったものなのでしょうか。
白井 諸説あるものの、基本となる考え方は「人」そのものであり、現実的には個人に内在する知識・スキル・能力、加えて仕事へのモチベーションや組織に対するエンゲージメントの強さなどメンタルの要素も包んだ「組織に貢献していく力」が、人的資本として定義づけられると考えています。
阿久津 海外では人的資本、いわゆる「ヒューマンキャピタル」という概念は、ノーベル賞経済学者のゲーリー・ベッカー氏の提唱などを契機に、1960年代から使われています。ヒューマンキャピタルの考え方としては、個人に内在する要素をKnowledge(知識)、Skill(技術)、Abilities(能力)、Other characteristics(その他の特性)の4つとみて、頭文字をとったKSAOsと要約されることが多いです。
さらに近年ではKSAOsを「個人」と「組織」の軸で議論する動きも出てきました。当初は個人のKSAOsが注目されていましたが、近年は「組織」の人的資本が重要ではないかという議論もあります。