「フィナンシャル・ウェルネス(Financial Wellness)」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか? Web検索すると、日本語ではあまり表示されませんので、まだ新しい概念といえます。しかし、英語で検索すると数多くの見出しがヒットします。事実、米国では数年前からホットワードになっており、フィナンシャル・ウェルネス調査と称した各種調査が盛んに行われています。
適切な日本語表現がないので、「フィナンシャル・ウェルネス」とカタカナ書きしていますが、説明調に訳すと、「お金の面での幸福度・豊かさ」といった感じになるでしょうか。
コロナ禍の影響が大きいのだと思いますが、どういう人が幸せなのかといったテーマに昨今の関心が集まっているように感じます。「幸せ中心社会への転換」「幸福経営とは何か」といった見出しも目にすることが増えました。ライフスタイルや価値観が大きく変わる中で、幸せとは何か、真の豊かさとは何かを考えることが人々の行動の軸になりつつあるのかもしれません。
こうした概念は英語ではTotal Wellbeingと表現しますが、これについても「実感としての豊かさ」といった日本語があてられています。
幸福や豊かさの度合いは、健康状態や仕事の充実度、周囲の人とのつながりやお金の問題など、様々な要素が影響を与えるとされています。個人によってもそのとらえ方は異なるでしょう。こうした中から、人間の幸福度を左右する大きなファクターとしてのお金にスポットを当てて、その健全度を計測しようという試みが「フィナンシャル・ウェルネス」の考え方です。
わが国では、お金のことを正面切って語るのは憚られるという空気がありました。一方で「結局はお金でしょ」という割り切りも見られたりします。「お金で幸福は買えない」かもしれないが、「不幸を避けるためにお金は必要」という声も聞かれます。お金に関してはっきりした価値観を持っている人もいれば、そうでない人も多いでしょう。もちろん、世代によってもお金へのスタンスは違ってくると思います。
お金は人生のどの局面であっても必ず絡んでくるものです。お金が入り口となって、自分にとっての幸せとは何かを考えてみた、というルートがあってもよいのではないでしょうか。
フィデリティでは、お金の面での幸福度を評価するために、グローバルベースで調査を実施しました*。そして、回答結果をベースに、金銭的な幸福度というものを「フィナンシャル・ウェルネス・スコア」として数値化してみました。
この調査では、お金の問題を4つの視点から検証しています。それだけでなく、「あなたはどう感じますか」といった聞き方をすることで、客観的なデータとのギャップを浮き彫りにするような工夫もしています。今号から複数回にわたり、調査結果について紹介し、そこから導かれることを考えてみたいと思います。
*フィナンシャル・ウェルネス・サーベイはフィデリティが2016年米国においてスタートさせた調査です。今回の調査は、2020年3月から5月にかけて、日本、英国、ドイツ、カナダ、香港、中国の6か国・地域に住む20~75歳の約1万7000人を対象(常勤もしくは非常勤で働いている人かその配偶者で、家計の意思決定者、最低世帯収入年額300万円以上)に主にオンライン形式で実施しました。日本では2,393人が対象になりました。