ローンが残っている場合はまず繰り上げ返済を!

退職金の受け取り方を考えるときには、まず自分が70、80歳になったときの生活をイメージします。多くの場合、その年齢になると公的年金の収入では足りなくなり、企業年金に頼らざるを得なくなります。そのため、目の前の一時金よりも年金(分割)受け取りを基本としてお考えいただくようアドバイスすることがほとんどです。

山田さんの場合にも同じことが言えますが、ローンが残り1000万円あるとのことですから、まずはこの返済を優先したいところです。「年金受け取りが基本」といっても、その中からローン返済をしていくのでは利息の分損をすることになります。ローンを返済できる1000万円以上を一時金で受け取り、繰り上げ返済してしまいましょう。

勤務先からは、「全額一時金受け取りでは所得税と住民税がかかるが、75%までは退職所得控除(勤続38年で 2060万円)の範囲内なので税金はかからない」との説明を受けたとのことですので、75%を一時金で受け取り、残りの25%を年で受け取る設計がいいでしょう。一時金で受け取る2025万円でローンを返済し、残りの1025万円は当座の貯蓄となります。

問題は、少ない貯蓄の中でその後の生活をどうするかです。

収入が増えない以上、蓄えを崩すことになる

山田さんが60歳から65歳の間は、給与所得と企業年金、それに奥様のパート収入がありますから、比較的余裕があります。

退職金の25%を原資とした年金については、予定利率が2.5%/年だとすると、60~75歳までの15年間、年間54万円程度(月額4.5万円)が受け取れます。65歳から生涯にわたって受け取れる公的年金(老齢厚生年金と老齢基礎年金)については、月額16万円ほどになります。

さらに奥様がパートを続けられればパート収入8万円が加わりますから、山田さんが70歳になるまでの収入は合計すると約28.5万円(企業年金4.5万円+公的年金16万円+妻のパート収入8万円)ということになります。奥様が65歳になると、奥様も老齢厚生年金と老齢基礎年金が受け取れるようになりますから、パートをやめても世帯収入は同額となります。

月々の支出33万円との差額、4.5万円については、ローン返済をした一時金の残額1025万円を取り崩しながらの生活となります。