高島屋がスタートさせたファイナンシャルサービス事業は連結子会社の高島屋ファイナンシャル・パートナーズが主に担い、投資信託の販売についてはSBI証券と提携し、金融商品仲介の仕組みで行う形となる。日本橋高島屋S.C.本館8階にオープンした「タカシマヤ ファイナンシャル カウンター」では顧客の資産形成や資産の承継などの相談を受け、アドバイスやソリューションを提供。また、Web上で証券口座の開設や取引を行うこともできる。
「ここ数年、準備を進めてきたことが実を結んだ格好です」と話すのは、高島屋の金融事業推進プロジェクトリーダーである平野泰範氏。「高島屋の店舗には大型店を中心にストアコンシェルジュというお買物の相談係を配置していますが、金融においても同じような総合相談窓口をつくりたい。それが高島屋の金融事業らしさにつながるはずだというのが最初の発想でした」。
平野 泰範 氏
生活を支えるという使命感が「お客さま本位」の意識を生む
高島屋で金融事業の強化が議論され始めたのは3年ほど前のこと。当初は検討チームという位置付けで、それが正式に金融事業推進プロジェクトとなったのが2019年9月。平野氏がそのリーダーを務めることになった。
平野氏はもともと金融機関の出身だが、このプロジェクトのために参画したわけではなく、入社は金融事業の議論がスタートした時期から、さらに2年ほど前にまで遡るという。「最近の金融業界では『顧客本位』がうたい文句になっていますが、あえて言うまでもなく、高島屋にはそうした意識が最初から根付いている点に入社当時は感銘しました。百貨店は当然のように年末年始や土日祝日も営業していますが、自分たちがお客さまの生活を支えているという使命感を持って皆が取り組んでいる。だからお客さまも信頼してくれるわけで、今回のスタートに当たっても、『高島屋さんがやるなら……』とお越しいただいた方が多く、本当にありがたい限りです」。
そうした信頼がベースにあるからこそ、「他の金融機関がどうとかではなく、分かりにくい金融について『ちょっと相談してみようか』と立ち寄っていただけるような場所をつくりたかった」と平野氏は続ける。その言葉通り、ファイナンシャルカウンターは2つの相談ブースが並ぶ開放的な雰囲気(写真参照)。もう少し落ち着いて相談したいという人のために、個室も用意されているという。相談は基本的には予約制で、同社のホームぺージから「ライフプランニングのご予約」ボタンを押して相談内容や日時などを選択する。相談員が空いていれば、その場で相談することもできる。
「最初にあったのは、高島屋が金融事業をやる意味は何なのかという議論でした。長年『貯蓄から投資へ』が叫ばれてきたものの、なかなか動いていない状況がありましたから、私たちのような新たなプレーヤーが参入し、投資へのハードルを下げられれば、これまで動かなかった層にも浸透するのではないか。だからこそ、相談業務を中心にすべきだという結論に至ったのです。そもそも普通の生活者がどうして投資をしないのか。する必要がないのか、興味がないのか、あるいは分かりにくいからなのか。そこをきちんと読み解いていくことも、私たちの仕事だと思っています」(平野氏)。