特定の業種やテーマに沿った銘柄を組み入れる投資信託は、一般的に「テーマ型」と呼ばれる。これまで日本の投資信託市場でも、数々のテーマ型ファンドが設定され、たびたびブームを巻き起こしてきた。遡ること20年前のITバブル期にはITやテクノロジー関連、2000年代半ばにはバイオ医薬品、環境、社会的責任投資、そして近年はフィンテック、ロボティクス、宇宙開発、ドローン、女性活躍社会など枚挙に暇がない。
このように、時代の流れとともに次々と新しい商品が登場しているという点で、テーマ型ファンドは、ある意味では日本の投資信託市場に根付いたものと言えるかもしれない。しかし、運用そのものを外部の運用会社に委託したり、ファンド・オブ・ファンズ形式で運用を行ったりするファンドも多いことから、以前より相対的なコストの高さが何かと槍玉にあげられやすかった。
加えて、テーマそのものが株式市場で一過性のブームに終わった例も少なくなく、テーマ型ファンドに対して当局の厳しい目が向けられてきたという経緯がある。金融庁が2017年に公表した「顧客本位の業務運営の定着に向けた課題」の中ではついに、「個人投資家にとってハードルが高い」商品であると名指しで指摘がなされてしまった。
タイミング投資の道具とされてきたテーマ型ファンド
果たしてテーマ型ファンドは、当局が名指しで批判するほど悪い商品なのか。
筆者はそうは思わない。少なくとも投資信託そのものに罪はない。テーマ投資自体は、株式取引でも一般的な投資手法である。テーマ型ファンドが「個人投資家にとってハードルが高い」商品になってしまうのは、販売サイドと投資家の双方が、短期間で収益をあげようとするあまり、結果的にタイミング投資になってしまうからである。
販売会社は顧客(投資家)を「儲けさせたい」と思ってテーマ型ファンドを提案する。投資家もまた、市場トレンドの波に乗って「儲けたい」と思うからこそ提案されたファンドを購入する。
このとき、販売サイドと投資家の双方がイメージする投資期間はせいぜい半年から1年といったところであろう。この時点で、もはやテーマ投資というよりも、売買タイミングがリターンを左右する状態になってしまっている。タイミング投資で短期間のうちに収益をあげたいなら、特定のテーマに賭けるよりもETFやインデックスファンドを活用したほうがよほど分かりやすいし、コストも抑えられる。
元来、投資テーマが産業構造や社会構造に影響を及ぼすまでには相応の時間がかかる。新規に設定されたテーマ型ファンドの基準価額が半年や1年で10%~20%上昇したところで、テーマそのものの盤石さや持続可能性を意味するわけではない。むしろ、たまたまタイミングが良かっただけだと思ったほうが良い。
テーマ型ファンドの目論見書や販売用資料にはよく「今後の成長が期待される(○○の分野)」「(○○の成長から)恩恵を受けるとみられる企業」などといったフレーズが登場するが、ここで言う「今後」が、向こう半年や1年を指しているわけでないことは明らかだ。
前述の通り、投資テーマは株式市場において時に一過性のブームに終わることもある。このため、テーマ型ファンドもやはり、最低でも3年程度の経過観測期間を見ておいたほうが良い。