受験費用をめぐり再び…

夜、ひかりはリビングで尊に改めて話を切り出した。

「ねえ、学費が心配なら、私もパートに出るよ。悠真が小学校に入れば、今より働く時間も取れると思うの」

尊は手に持っていたスマートフォンを置いた。

「働くのは別に反対しないけど、それで月どのくらい稼げるんだ?」

「まだ具体的には決めてないけど、学費の足しにはなるでしょ?」

「授業料だけじゃないんだぞ。入学金もあるし、制服や教材費、ほかにもいろいろかかる。それを何年も払い続けられるのか?」

「だから、私も働くって言ってるじゃない!」

せっかく自分なりに考えたのに、尊は欠点ばかり指摘してくる。ひかりは思わず語気を強めた。

「お金のことばかりじゃなくて、悠真の将来も考えてよ。地元の中学校は評判が悪いんだから」

「その中学校の評判って、本当なのか?」

「ネットにも書いてあったし、ママ友からも聞いたよ」

「匿名の口コミや噂レベルの情報だけじゃ、実際の状況はわからないだろ」

ひかりは口をつぐんだ。確かに情報の信ぴょう性までは詳しく分からない。それでも、気になる情報がある以上、何も対策しないのは不安だった。

「でも、私立なら安心でしょ? それに悠真だって受験に乗り気なのよ」

「悠真が? 塾が楽しかったって話じゃなかったか?」

「また行きたいって言ってたもの」

「それと私立に通いたいっていうのは、また別の話だろ」

尊は落ち着いた口調で続けた。

「本人がどう思ってるのかも、中学の今の状況も、ちゃんと確かめてから考えたほうがいい」

「……結局、何を言っても反対するんでしょ?」

「そうじゃない。今のところ必要性が感じられないから、簡単には賛成できないって言ってるんだ」

ひかりはそれ以上話す気になれず、席を立った。どうして尊は、もっと前向きに考えてくれないのだろう。先ほどの会話が頭の中で何度も繰り返される。

「悠真のためなのに……」

ひかりは尊の言葉を振り切るように、音を立てて寝室のドアを閉めた。