仕事と家事を抱え疲労が蓄積
そんな日々を送るうち、変化が表れ始めた。最近は夜になると、ぐったり疲れきっていて、食事も喉を通らないことが多い。10月に入ると、仕事でも失敗が目立ち始める。ある日、注文された商品の数量を出荷記録に入力し忘れ、発送準備をやり直すことになった。
「穂香さん、これじゃ数が合わないわよ。ちゃんと確認してちょうだい」
「すみません。すぐに直します」
しかし翌週には伝票の日付を間違え、再び月江から注意された。
穂香は同じ失敗をしないよう、チェック項目を増やした。だが1つの作業に時間がかかるようになり、ほかの仕事が後回しになる。そんな悪循環に陥っていたある日、さらに大きなミスが発覚した。取引先から、請求金額が注文内容と違うという電話が入ったのだ。
「えっ、先日の注文ですか? ……あっ、申し訳ございません」
確認すると、数量変更前の古いデータを使い、本来より多い金額で請求書を作成していた。穂香はすぐに謝罪し、正しい請求書を送り直した。古くから付き合いのあった取引先は笑って許してくれたが、月江の表情は厳しかった。
「穂香さん、請求金額を間違えるのは困るわ。お客様からの信用にも関わるのよ」
「申し訳ありません。確認したつもりだったんですが……」
「つもりじゃ駄目なの。最近、ミスが多すぎるわよ」
その言葉に、穂香はうつむいた。
夕方、事情を知った雄一からも重ねて注意された。
「穂香、金額の間違いは本当に気をつけてくれよ。代替わりしたばかりで悪い評判を流されたくない」
「ごめんなさい……気をつけるから」
本当は余裕がないと伝えたかった。しかし、雄一も月江も朝から晩まで働いている。自分だけが弱音を吐くわけにはいかなかった。
「穂香、もう食べないのか?」
「うん……ちょっと気分が悪くて。ごめんなさい」
その夜、穂香は食事をほとんど残した。布団に入っても請求書のミスが頭から離れず、何度も寝返りを打つ。以前なら簡単にできたはずの仕事さえ、今はまともにこなせない。情けなさにさいなまれながら天井をにらんでいるうちに、外が明るくなってきたことに気づき、穂香は重い身体を起こした。
●義父の病気を機に夫・雄一と地方へ移住し、義実家の酒蔵を手伝い始めた穂香。ミスを繰り返して義母や夫から注意されても弱音を吐けないまま、食事も睡眠もまともに取れなくなっていく…… 後編【「頑張ってくれていたのにね…」義実家へ移住し体調を崩した妻…義母が月夜に明かした“意外な顔”】にて、詳細をお伝えします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
