<前編のあらすじ>
夫を亡くしてから、1人で過ごす時間が増えた三枝子は、玄関先で転倒し利き手を骨折たことで、しばらく右手を使えなくなってしまう。
料理も思うようにできないため、三枝子は昼食を取ろうと近所のファミレスへ向かう。ところが入口には操作方法が分からない受付用モニターが…。店員に尋ねたものの、最初の画面を示してもらっただけで受付が済んだと思い込み、待合席に座った。
その後、三枝子よりあとから来た客が次々に案内されていく。席の都合だと思って待ち続けるが、若いカップルが画面を操作して番号票を取る姿を見て、自分は同じ操作をしていないことに気づく。
●前編【「ここで待てばいいのかしら」夫を亡くした高齢女性…ファミレスで直面した“思わぬ壁”の正体とは】
待ち続けた時間は何だったのか
三枝子はしばらく迷った末、店内を見回した。先ほど対応してくれた店員が、空いた食器を下げながらロビーへとやってくる。忙しいところを呼び止めるのは申し訳なかったが、このまま座っていても仕方がない。三枝子はベンチから立ち上がり、店員に声をかけた。
「すみません」
「はい、どうされましたか?」
「順番はまだかしら。私、もうずいぶん待っているんだけれど」
店員は一瞬きょとんとしたあと、すぐに受付用のモニターへ向かった。
「確認いたします。受付番号の紙はお持ちですか?」
「紙? いいえ、何も……」
店員の表情が変わった。画面を確認してから、三枝子のほうへ向き直る。
「申し訳ありません。それだと受付が完了していないようです」
「そうだったの……」
店員の説明によれば、画面で人数や希望する席を選び、最後に受付を確定すると番号の書かれた紙が出てくるという。先ほど店員が触ったのは最初の画面を表示しただけだったらしい。
「きちんとご説明せず、申し訳ありませんでした」
「いいのよ。私が分からなかっただけだから」
あのとき店内が混んでおり、店員たちが慌ただしくしていたことは覚えている。お店を責めることはできないだろう。それでも、長い間待っていた時間が無駄だったことを知り、虚しくなった。
