1万2,000人削減を伴う構造改革は成功するか
パナソニックは、不採算事業や成長の見込みにくい事業を整理し、本社・間接部門の集約、営業部門の効率化、拠点の統廃合などを進めています。
その一環として、国内外で合計1万2,000人規模の人員削減を打ち出しました。
計画では2029年3月期までに構造改革をやり切り、グループ全体で累計3,000億円程度の調整後営業利益改善を目指します。
さらに、ROE10%以上、調整後営業利益率10%という目標も掲げています。
足元の決算を見る限り、コスト削減や固定費改善は成果を上げています。
ただし、黒字企業が大規模な人員削減を進めることには副作用もあります。
短期的には組織をスリム化できても、優秀な人材まで流出すれば、改革後の成長力を損なう可能性があります。
コストを削減するだけでは、5年後、10年後の売上と利益を伸ばし続けることはできません。
投資家が見るべきなのは、人員削減の人数だけではなく、改革後にどの事業へ人材と資本を振り向け、次の成長エンジンをつくれるかです。
構造改革が「縮小均衡」で終わるのか、「選択と集中」による成長につながるのかは、今後の重要な確認点です。
パナソニック株のリスク① EV用車載電池
一つ目の懸念は、EV向け車載電池です。
パナソニックはテスラをはじめとする自動車メーカーに電池を供給しています。
しかし、北米ではEV購入支援策の終了などによって需要が一時的に落ち込みました。
足元では底打ちから回復に向かう動きも見られますが、自動車市場は景気や金利、政策の影響を受けやすく、需要の変動が大きい分野です。
さらに、米国カンザス州に建設した新工場では、本格稼働の遅れが懸念されています。
大規模な設備投資を行った以上、稼働率が上がらなければ固定費負担が重くなり、収益を圧迫しかねません。
一方で、パナソニックは車載電池の需要が弱い場合、データセンター向け蓄電システムへリソースを振り向けるなど、需要環境に応じた対応も進めています。
今後は、カンザス工場が計画どおり本格稼働するか、北米EV市場が回復するか、車載需要の弱さをデータセンター向け蓄電需要でどこまで補えるかを確認する必要があります。
パナソニック株のリスク② Blue Yonderの収益化
二つ目の懸念は、Blue Yonderです。
Blue Yonderは、企業の物流、在庫、需要予測などをAIで最適化するサプライチェーン・ソフトウェア企業です。
パナソニックは2021年、約71億ドルという巨額を投じて同社を買収しました。
2026年3月末時点では、Blue Yonderに関連するのれんが約1兆円残っています。
買収価格に大きなプレミアムを支払った以上、将来の利益成長によって投資額を回収しなければなりません。
しかし、のれん償却などを含めた調整後営業利益は第1四半期で44億円の赤字となり、2027年3月期の修正後通期見通しでも230億円の赤字が予想されています。
事業自体は収益化に向かいつつあるものの、買収額に見合う成果を上げているとはまだ言いにくい状況です。
AIを活用したサプライチェーン最適化への需要は、今後も伸びる可能性があります。
Blue Yonderがパナソニックのグローバルな顧客基盤を生かして大型案件を獲得し、利益を生み出す中核事業へ育てば、企業評価を大きく高める要因になります。
反対に、収益化が進まなければ巨額ののれんが重荷となり、減損リスクも意識されます。
売上成長だけでなく、利益率や大型案件の獲得状況、パナソニック既存事業との相乗効果を継続的に確認する必要があります。
