<前編のあらすじ>
手取り24万円でやり繰りする32歳独身の絵里。相次ぐ友人の結婚や出産に伴う「一律5000円」のお祝い金ルールに疲弊していた。
ある日、グループLINEに届いた里香の第二子誕生への集金連絡。今月の出費が限界に達していた絵里は、祝福していないと思われる恐怖や同調圧力に葛藤しながらも、意を決して「今回は不参加」と返信する。
しかし送信直後、賑やかだったグループLINEの動きはピタリと止まってしまい……。
●前編:「1人5000円ずつ出し合おう」結婚出産ラッシュの“強制集金”に疲弊…30代独身女性が友人らに見せた「初めての抵抗」
全員既読になっても返事が来ない
グループLINEの動きが止まってから、丸一日が経過した。
既読は全員がついている。しかし、いつもなら秒単位でスタンプを返す友人たちが、誰一人として何も書き込まない。その沈黙こそが、彼女たちの無言の抗議であり、困惑の表れであることは痛いほど伝わってきた。
絵里は仕事中もスマホが気になり、何度もデスクの下で画面を確認した。心の中は後悔と自己嫌悪でぐちゃぐちゃだった。
「やっぱり5,000円くらい、無理してでも払えばよかったかな」
「友達の結婚や出産へのお祝いを、お金を理由に断るなんて、私はなんて器の小さい人間なんだろう」
そんな自問自答が頭をぐるぐると駆け巡る。
その日の夜、ようやく美香から個別にメッセージが届いた。
『絵里、体調悪い? それとも、仕事で何かあった? いつでも話聞くからね』
一見、絵里を気遣うような優しい言葉。しかし、絵里には分かっていた。これは「お祝いを断るなんて、よほど異常な事態が起きているに違いない」という、彼女たちの価値観の裏返しなのだ。「お金が厳しいから断る」というシンプルな選択肢は、彼女たちの“幸せのロードマップ”の中には存在しないのだ。
絵里はベッドの上に膝を抱え、しばらく考えた。ここで「ちょっと仕事が忙しくて」「体調を崩していて」と言い訳をすれば、その場は丸く収まるだろう。しかし、それでは何も変わらない。少したてばまた別の誰かの「お祝い」のために、自分を削りながら「おめでとう」の代金を支払うことになる。
