「払いっぱなし」の一方通行…上がり続ける予算に疲弊
ここ数年、地元の友人たちの「結婚」「新築」「第一子出産」「第二子出産」というライフイベントが怒涛の勢いで押し寄せている。そのたびに、グループ内では「一律5,000円」のプレゼント代がルールのように徴収されてきた。絵里は独身で、当面結婚する予定もない。つまり、このお祝い金は常に払いっぱなしの一方通行なのだ。
もちろん、見返りを求めてお祝いしているわけではない。しかし、彼女たちのライフステージが進むにつれて、お祝いの品も、求める生活水準もどんどんインフレしていく。かつては3,000円だったプレゼントの予算が、いつの間にか「一生モノ」「上質なブランド」という名目で引き上げられていた。
『絵里もオッケーかな?』
美香から名指しでメッセージが届く。
いつの間にか、返信していないのは絵里だけになっていた。全員が「賛成」の文字やスタンプを並べる中で、一人だけ「ちょっと今月厳しい」と書き込むことは、冷酷な人間だと思われるに等しい。そんな同調圧力が、スマホの画面から無言の重圧となって絵里の肩にのしかかる。
(私だって、自分の生活を守るために、必死で働いて貯金してるのに……)
絵里の指はキーボードの上で迷い、そして一度すべてを消去した。心臓がドクドクと不快な音を立てる。深呼吸をひとつ。そして、震える指先で再び打ち込んだ。
『ごめんね、今月ちょっと出費が重なっちゃって。今回は不参加にさせてもらいます』
送信ボタンを押した瞬間、部屋の空気が凍りついたような気がした。そこから、賑やかだったグループLINEの動きがピタリと止まる。既読がついたまま、誰も返信してこない。その沈黙が、絵里の心をじわじわと侵食していった――。
●彼女の決断が招いた結末とは? 後編【「今回は不参加で」納得できない“ギフト代強制集金”を拒否した30代独身女性…全員から既読スルーされても折れなかった理由】で詳説します。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
