入館前から興奮が隠せず…女性二人組から注意を受ける
ジュニア向けのアートスクールで出会った優衣ちゃんとは、藍花と同じ私立小学校に通っていることが分かり、すぐに意気投合したようです。それほど友人が多い方ではない藍花にとっては大切な存在です。藍花はオーソドックスな絵を描きますが、優衣ちゃんの作品はモダンアートを思わせる造形や色使いのセンスを感じるもので、将来は美術大学への進学を目指しているようです。
そんな二人ですから、小学生とはいえ美術に関する会話はかなり高度で、時には私たち親もついていけないほどです。今思えば、それが良くなかったのかもしれません。
ゴッホは日本でも大人気ですから、美術展は日時指定にもかかわらず、入館する前から行列ができていました。
藍花と優衣ちゃんは名作の《夜のカフェテラス》の実物を初めて見る興奮を隠せず、二人で作品の構図やマチエール(材質感)に関する話で盛り上がっていました。
それがうるさいと感じられたのかもしれません。私たちの後ろに並んでいた40代くらいの女性の二人連れから、「静かにしてもらえませんか?」と注意されてしまいました。
私は「申し訳ありません」とおわびした上で、藍花と優衣ちゃんに「もう少しだから、お話は後にしようね」と言い聞かせたのですが、二人とも不服そうでした。
その気持ちはよく分かりました。藍花と優衣ちゃんを注意した女性たちは、少し前まで、神戸の巡回展も見たとか、その際は北野ホテルに泊まってミシュランスターのフレンチレストランでランチを食べたといった自慢話を声高にしていて、それこそ、周囲から無言の顰蹙を買っていたからです。
まぁ、それだけで済めば良かったのですが、その後もひと悶着ありました。
