小さな便箋に添えたメッセージ
数日後、知育玩具と絵本のセットに購入者が現れた。アカウント名は「ゆきママ」。プロフィールには「1歳の男の子をワンオペ育児中です」とだけ書かれていた。
美穂はすぐに梱包作業に取りかかった。プチプチで玩具を包み、絵本が濡れないようにビニール袋に入れる。指先を動かしながら、ふと、絵本の表紙に目が留まった。それは蓮が風邪を引いて夜中に何度も泣いたとき、抱っこしながら繰り返し読んだ思い出の一冊だった。あの頃の自分も、今の「ゆきママ」さんと同じように、孤独で、手探りで、毎日を必死に生きていた。
「ただの不用品の処分、だけど……」
美穂は作業を止め、引き出しから小さな便箋を取り出した。そして、万年筆で迷いなく言葉を綴り始めた。
『ご購入ありがとうございます。これは私の息子が小さかった頃に大好きだった宝物です。子育ては大変なことも多いですが、振り返ればすべてが愛おしい時間でした。ワンオペ育児、毎日お疲れ様です。陰ながら応援しています』
メッセージカードをそっと梱包材の中に仕込み、美穂はダンボールの封を閉じた。数百円の利益のためではなく、かつての自分と同じ道を歩む誰かへ小さなエールを送るような気持ちに変わっていた。
●発送完了から数日――高橋さんが購入者から受けた「驚きの評価」とは? 後編【「フリマアプリの受取評価」に思わず言葉を失う…たった1500円の商品が“一生の宝物”に変わった「想定外の瞬間」】で詳説します。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
