未来が愕然とした理由

夕方になり仕事から健太が帰ってきた。今日は早番だったためまだ明るいうちの帰宅だった。

「クーラーが壊れちゃっててぬるい風しか出なくなっているのよ」

未来の説明を聞いた健太は驚いた顔をした。

「うわ、マジか……。これからどんどん暑くなるってニュースでやってたぞ?」

「どうする……?」

エアコンはこの部屋に引っ越してきたときから備え付けられていた。ただマンションが管理しているわけではなく前の住人が置いていったものだった。だから壊れても管理会社が修理をしてくれるというわけではない。

話し合いをしていると芽依が健太に駆け寄ってきた。

「おとうさん、暑いからクーラー買ってよ〜。もうあれ動かないんだって〜」

「さすがにあの状態で夏は乗り越えられないわ。もうクーラー自体も古くなってるし買い替えた方がいいと思うんだけど……」

健太は娘と妻のお願いを聞き、クーラーをチラチラ見ながらしばし考えていた。そしてため息をついて頷いた。

「……そうだな。買い替えるか……」

「やったー! これで涼しくなるー!」

芽依は嬉しそうにスキップをしながら自分の部屋に戻っていった。

「ありがとね」

未来は健太にお礼を言った。

「いや、全然いいんだよ。それに新しいエアコンのほうが電気代は安くなるしトータルで見たらこっちのほうがお得になると思うんだ」

「……そうね。夏はほとんどクーラーをつけてると思うからね」

「まだ店も開いてる時間だし、在庫と工事の空きを担当者に確認してみるよ。社割も使えるかどうかも聞いてみる」

「お願いね」

未来は健太が電話をしている間に夕飯の準備を進めた。野菜炒めを作っているだけで汗がじんわりと出てきた。料理が完成しお皿に盛り付けているとリビングに健太がやってきた。てっきり部屋着に着替えていると思ったがまだスーツ姿のままだった。

「あれ? どうしたの?もうご飯だから早く着替えて来て。……どうかしたの?」

健太は困ったように息を吐いた。

「在庫はあるんだけど設置工事が全然空いてないらしい」

「え?」

「この暑さで注文が殺到してるんだって。今買っても取り付けが1カ月以上先になるって言われた」

健太の言葉に未来は目を丸くした。

「1カ月以上って……」

つまり梅雨が明けて夏本番を迎えてもクーラーなしの生活をしないといけないということだ。その事実を知り、未来は愕然とした。

●壊れたエアコンのせいで、未来たち家族は蒸し暑い部屋での生活を余儀なくされる。買い替えを決めても設置工事は1カ月以上先――真夏を目前に家族4人の“暑さとの戦い”が始まってしまう…… 後編【梅雨のエアコンなし地獄に子どもが悲鳴…家族4人がすがった“最後の知恵”】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。