義務化された相続登記で勃発した兄弟の危機

“要らない相続”リスクを痛感したのは数カ月前、父親が祖父から引き継いだ実家の不動産の名義の書き換えを代行した時でした。

2024年4月からは相続した不動産の登記が義務化され、義務化以前の相続についても27年3月までに登記を済ませなければならなくなりました。父親の実家は祖父が亡くなってから5年以上誰も住んでおらず、登記も祖父の名義のまま放置されていました。固定資産税は父親が払っていたようです。

私は二男ですが、業務で不動産を扱うこともあるので父親から頼まれ、伯母や伯父の同意を得て名義を祖父から父親に変更しました。その際に父親から、いずれは兄が引き継ぐことになるのだから、兄に贈与する形で兄名義にしておくことはできないかと相談されました。

私自身はむしろ空き家の処分を急いだ方がいいと思いましたが、念のため、兄に意向を聞いたところ、「お前、父さんを丸め込んで俺に不良債権を押し付けようとしていないよな?」と疑いの目を向けられました。「こっちが忙しい中、時間を割いて手続きしているのになんだよ」と、危うく兄弟げんかになるところでした。

不良債権候補は父の実家だけではない

我が家の場合、父の実家だけでなく、両親が住んでいる私たち兄弟の実家の不動産や山林も立派な将来の不良債権候補です。

団塊の世代の両親は「モノ=豊かさ」という価値観を持ち、我が家の中は両親が貯め込んだ年代物のガラクタだらけです。両親にとっては思い出の詰まった大切な物なのかもしれませんが、私が見る限り資産価値はゼロに等しく、テレビの鑑定バラエティ番組のような「お宝発見」というわけにはいかないように思います。むしろ、片付けや解体の費用がかさみそうです。

一方で、弱小農家ですから資産らしい資産はほとんどありません。このままいけば、相続が発生した時には不動産の処分費用が持ち出しになる可能性が高く、かつ、更地にしたからといって売れるような立地でもありません。

23年4月には相続で持て余した土地を国が有料で引き取ってくれる制度(相続土地国庫帰属制度)もスタートしていますが、実はこの制度、資料をよく読むと引き取る土地の条件がかなり厳しく、うちの実家や父親の実家などは箸にも棒にもかかりそうにありません。

兄や私からすれば、父親や母親が存命中に不良債権候補の不動産やガラクタを処分するか、処分の道筋を付けておいてくれるのが望ましいのですが、70歳を超えた頃からめっきり老け込んだ様子で、特に父親の方は最近物忘れが増えていて、期待薄でした。

日本全体で世帯主が70歳以上の世帯の保有金融資産は25年3月末時点で648兆円に上っていて、団塊の世代をピークとする大相続時代を経てそれが下の世代に移転されるというレポートがありました。とはいえ、中にはうちの両親のように移転する資産がほとんどない人もいます。だからこそ“要る相続”ができる人はラッキーじゃないかと思えてしまうのです。