改正の恩恵を受けられなくなる
弘樹さんが65歳になるのは、改正後の2029年6月。
もし弘樹さんが繰上げ受給をせず、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給するなら、それぞれその翌月(2029年7月分)から受給できます。同時に、この2029年7月分から老齢基礎年金の子の加算も始まることになります。弘樹さんの場合、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計期間は300月を超えていますので、年29万円で加算され、前述の減額もありません。
そして、航太さんが18歳年度末を迎える2035年3月分まで加算されることになり、その総額は約167万円となります。なお、弘樹さんの場合、老齢厚生年金からの加算(子の加給年金)については対象外となります。
一方、もし弘樹さんが年金を繰上げ受給した場合、もらえる老齢基礎年金、老齢厚生年金の額が減額されます。弘樹さんが62歳になった月に繰上げ受給するなら、14.4%の減額となります。65歳開始の場合に合計83万円だった年金が71万円程度になります。
また、それだけではありません。改正前(2028年3月以前)に繰上げ受給を開始する場合は、改正後の老齢基礎年金の子の加算の対象外となり、65歳になっても加算は受けられなくなってしまうのです。
つまり、今年金を繰上げ受給すると、合計83万円の老齢基礎年金と老齢厚生年金が少なくなるだけでなく、制度改正で子への加算が増えるメリットも享受できません。
これを聞いた弘樹さんは驚きました。
「知らなかった。今繰上げ受給すると改正の恩恵が受けられなくなるなんて……」
弘樹さんは考え直し、繰上げ受給はやめることにしました。
「65歳まであと3年。それくらいは待てばいいだろう。それまでは事業をがんばってできるだけ収入を増やそう」
繰上げ受給で年金が減額されることは知られていますが、改正後の子の加算に関するデメリットはあまり知られていません。
65歳の時点で高校生までの子どもがいるケースはそれほど多くはないかもしれませんが、もし該当する場合は、加算ルールをしっかり確認しておきましょう。
※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
