緊迫する中東情勢をはじめ米国市場の不透明性はますます高まっている。いかにして市場の歪みを捉え、機動的な資産配分を行うべきか。その選択肢の一つとしてにわかに注目を集める「セクター投資」について、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントに話を聞いた。※5月13日までの情報をもとに記事を作成

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント ヴァイスプレジデント セクター・セールス・スペシャリスト 山口美帆氏

マクロの環境に合わせて投資先を機動的に変える

――米国の株式市場では激しい値動きが続いていますが、現在の市場環境を整理してください。

足元のイラン情勢に際して懸念されるのが、原油価格の高騰による物価の上昇幅や実質所得、企業業績や今後の金融政策への影響です。また、米国経済がインフレに入る可能性を示唆する声が出てきており、今後の動向に注意する必要があります。

加えて重要なのが、このエネルギー価格の上昇が一時的な跳ねなのか、いったん落ち着くのか、高止まりになるのかを慎重に見極めることです。いまだ原油の供給が安定するか先行きが不透明ではありますが、弊社では長期化するというよりは収束に向かうだろうと分析しています。

――セクター投資とはどのような投資ですか。

セクターとは上場株式を業種別に分類した銘柄の集まりのことで、ソフトウェアや半導体などの「情報技術」、医療に関する「ヘルスケア」といったものになります。セクター投資とは、こうしたセクターの中から、マクロ環境の変化に合わせて好調なパフォーマンスが見込めるものを選別し、その投資比率を高めることで、リスクを下げつつ高いリターンを狙う戦略です。マクロ環境や企業のファンダメンタルズ、過去の値動きのパターンといった複数の要素を考慮し、足元の環境下に対して適切なリスクをコントロールするための手法だといえます。

現在のようなボラティリティの高い環境下ではセクターの好不調が分かれやすく、セクター投資が高い効果を発揮するでしょう。弊社では、セクター投資のETFとして「セレクト・セクターSPDR® ETFシリーズ」を提供しています。

――セクターと投資をどのように結びつけて考えればよいでしょうか。

セクターの分類が投資にどう関連するかを考える際、私はよく冷蔵庫にたとえています。例えば、「景気が悪くなりそうだからとにかくお米と水を備蓄しておこう」と思うことは、「生活必需品」といったディフェンシブなセクターを増やすことと似ています。あるいは、「生活に余裕があるからいい食材を入れたい」と思うことは、生活を豊かにするタイプのセクター、例えば「情報技術」や「コミュニケーション・サービス」を増やすことと近いです。その時のシチュエーションによって限られた容量の冷蔵庫に何を入れるかが、まさにどのセクターを採用するかと重なると考えています。

――セクターの分析で重視する指標を教えてください。

主に3つあります。

1つ目が金融政策です。特に金利の変化は金融への依存度が高いセクターに波及しやすいので、金融セクターや不動産セクターに強く影響が出ます。ただし、金利の影響はセクターごとに異なります。金融セクターは利下げ局面では相対的に逆風となりやすい一方、利上げ局面では収益環境の改善が期待されます。一方、不動産セクターは、利下げや金利の安定がプラスに働きやすい点に留意が必要です。

2つ目が景気循環で、失業率や消費者信頼感、GDPや製造業PMIといった指数から経済や消費の動向を捉えています。例えば、需要の強弱で機械や設備を提供する「資本財」セクターへ影響が出るなど、景気感度の高いセクターはこういった数字に左右されて動いていきます。

3つ目がコモディティです。今回のイラン情勢による原油価格の高騰は「エネルギー」セクター群の収益見通しに直結していますし、他のセクターにも影響が波及していくことはすでに報道されている通りです。