華やかな大学生活の裏側

4月に入って講義が始まると、はるかの毎日は思っていた以上に慌ただしくなった。

朝は駅まで歩き、ラッシュの電車に揺られて大学へ向かう。地元にいたころはずっと自転車通学だったから、最初に半年分の定期を買ったときは、その値段に思わず目を見張ったものだ。

キャンパスは広く、どこを見ても知らない顔ばかりだったが、数日もすると、同じ授業で隣になった子と昼を食べたり、新歓に誘われたりするようになる。高校までとはまるで違う空気が新鮮で、はるかは自然と浮足立った。

「はるかちゃん、2限の基本書ってもう買った?」

昼休み、学食で向かいに座った友人が、うどんをすすりながら聞いた。

「まだ買ってない。ていうか1冊がめっちゃ高くない?」

「分かる。びっくりした。普通に3000円とかするし」

「ほんとそれ」

笑い合いながらも、はるかは内心でため息をつく。

定期代に続いて教科書代まで重なると、思っていた以上に出費が痛い。さらに、新入生向けの説明会やサークル見学も続いた。終われば自然と「駅前で軽く食べていかない?」という流れになる。そこで帰るのも感じが悪い気がして、はるかはたいてい誘いに乗って一緒に店へ入った。

「はるかちゃんって1人暮らしだよね? このへん、もう慣れた?」

「全然。駅の出口、いまだに間違えるよ」

「あるよね。私も昨日、反対側出ちゃった」

そんなやり取りは楽しかった。知らない土地で知り合いが増えていくのは、それだけで心強い。しかし、帰宅して財布からレシートを取り出すたび、気分は少し暗くなる。昼食の学食代、コピー代、教科書代、帰りに買ったシャンプー。ひとつひとつは小さいのに、積み重なると無視できない額になる。

「うわあ……」

はるかはスマホで口座残高を見て、しばらく固まった。

両親と祖父母が、それぞれ贈ってくれた入学祝い。引っ越しと新生活のあれこれで、もうほとんど残っていない。これからまだ必要な本もあるし、交際費だって毎月かかるだろう。

「これは、バイトしないとまずいかも」

誰もいない部屋で、ぽつりとつぶやく。

楽しい新生活に、急に現実が重くのしかかってきた。

はるかは求人アプリを開き、指で画面をスクロールする。飲食、販売、塾講師。条件を眺めながら、今度こそ早く決めなければと、少しだけ焦っていた。