現在、株式市場で大きな盛り上がりを見せている「フィジカルAI」についてご存知でしょうか。AIをロボットに組み込むことで、現実世界での仕事も代替させようとするビジネスのことです。
このテクノロジーが私たちの未来をどう変え、そしてどの企業がその恩恵を受けるのでしょうか。そして、フィジカルAI関連企業に投資する意義はあるのでしょうか。
つばめ投資顧問のアナリストの元村浩之さんが解説します。
※本記事は1/15につばめ投資顧問にて公開された「フィジカルAI「大化け期待銘柄」:ファナック・安川電機から読み解く未来」を編集の上、元村氏による特別コメントを付して掲載しております。
日本の企業の可能性【特別コメント】
フィジカルAIの特許総合力ランキングでは中国企業が上位を占めています。この現状を目の当たりにすると、日本の勝ち目はないように映るかもしれません。しかし表面的な数字だけで日本の潜在能力を過小評価すべきではありません。
フィジカルAIの真価は、デジタルの「頭脳」が物理世界の「身体」を手に入れる点にあります。データの蓄積やAIモデル構築といった「頭脳」の領域で中国が先行しているのは事実ですが、現実世界で物体を動かすための「身体性」、すなわちロボティクスや精密制御の領域において、日本は依然として他国の追随を許さない技術力を有しています。
その優位性を示す好例が「力加減の制御」です。形の定まらない柔らかい食品を潰さずに掴む、あるいはミクロン単位の誤差が許されない精密部品を組み付ける作業は、AIの画像認識だけでは完結しません。指先の触覚を検知し、瞬時に力を微調整する高度なセンシングとアクチュエーター技術が不可欠です。この「神経と筋肉」の領域で長年現場データを蓄積してきた日本企業の優位性は、特許数だけで覆せるものではないのです。
こうした視点で見れば、富士通の環境認識技術への期待値は高まります。また、産業用ロボットの雄である安川電機や、ITとインフラ制御の両輪を持つ日立製作所なども、AIを単なる計算機で終わらせず、物理的な作業に変換できる「現場力」を持った企業と言えます。
昨今懸念される「AIバブル」ですが、私は一概にそうとは言い切れないと思っています。フィジカルAIは「人手不足」という社会課題への直接的な解であり、需要は極めて堅実です。以上を踏まえると、それを社会実装するための巨額な先行投資が行われている、という見方もできます。
とはいえ、社会実装には物理的な「壁」も存在します。ハードウェア導入コストや、人と共存するための絶対的な安全性確保など、乗り越えるべきハードルは低くなく、アプリのように一夜にして広まるものではありません。
投資戦略としては、短期的な成長率に一喜一憂せず、「コストや安全性の壁をクリアし、どの現場で実装が進んだか」といった進捗度合いを冷静に見極め、長期で業績の積み上がりを待つスタンスが有効です。時間がかかる分、一度インフラとして定着すれば、市場は極めて強固なものになります。日本こそが、「社会実装」で世界をリードできる技術力がある。そう思える技術力が日本企業にはあります。
