さらなる口座数拡大には何が必要か?

――最後に制度全体についてですが、NISAの口座数自体は足元で約2700万口座まで増えました。今後、さらに制度が普及するためには、どんなことが必要になりますか。

これは私見ですが、これまで口座数の拡大に大きく寄与していたのは、SBI証券や楽天証券といった大手ネット証券です。そうしたネット証券で自ら口座開設をして投資できる層というのは、大部分がすでにNISAを活用していると思います。

一方で、これから新たに口座数を拡大するには「口座開設のやり方がよく分からない」とか、「開設してもどう使えばいいのか分からない」といった層を開拓する必要があるのではないでしょうか。そのように考えると、今後は対面チャネルを持つ金融機関の果たす役割が重要になると考えています。

――リアルの店舗を持つ証券会社や銀行ですね。

おそらく銀行の方が、特に有利ではないでしょうか。それは、銀行口座は誰でも1つ、2つ持っていますよね。社会人なら給与振込口座があるでしょうし、アルバイトでも給料を振り込んでもらうために口座は必要になる。このユーザーとの接点が、まだNISA口座を持たない層が資産運用に目を向けるきっかけになるのではないかと。

今、定期預金も徐々に利回りが付くようになってきましたが、将来的なインフレを考えたら定期預金だけでは目減りするので、一部を運用した方がいいかもしれない……という層が新たに出てくる可能性があります。むしろ、インフレによる目減りは認識しにくいだけに金融機関も資産運用の必要性を訴求する必要もありそうです。

さらに、これからNISAを利用するという層には、金融機関の対面によるサポートがどうしても必要でしょう。銀行と証券では銀行の方がまだなじみもある。そういう意味で、銀行の方々には頑張ってほしいと思っています。

 

前山裕亮

ニッセイ基礎研究所主任研究員。大和総研、大和証券キャピタルマーケッツ、イボットソン・アソシエイツ・ジャパンを経て2014年にニッセイ基礎研究所入社。2022年より現職。株式市場・投資信託の資産運用の調査、分析に従事。