農機・産業車両タイヤへ転換の「大戦略」 大型買収で利益率が急改善

まずは業績の推移を振り返りましょう。横浜ゴムは21年12月期から業績の改善傾向が顕著です。特に利益がよく伸びており、事業利益(※)率は23年に初めて10%を超え、翌24年には12%台にまで改善しました。

※事業利益…売上収益から売上原価と販売費および一般管理費を控除して算出

横浜ゴムの業績(2015年12月期~2024年12月期)
 
出所:横浜ゴム 決算短信より著者作成
 

業績が改善したのは、オフハイウェイタイヤへの注力が奏功した格好です。オフハイウェイタイヤとは、大まかにいえば乗用車用や二輪車用以外のタイヤのことです。農業機械や建設機械、フォークリフトや航空機などに用いられます。世界のタイヤ市場の規模は、乗用車・二輪車向けの「タイヤ消費財」が10兆円、オフハイウェイタイヤにトラック・バスといった商用車向けタイヤを加えた「タイヤ生産財」が10兆円と、おおむね1:1の構成です。

横浜ゴムは従来、乗用車向けのタイヤが中心でした。タイヤ消費財とタイヤ生産財の売り上げ比率は4:1と、大きくタイヤ消費財へ偏っていた状況です。しかし、タイヤ消費財は中国メーカーの台頭などから競争が激しく、低採算の要因となっていました。

そこで、横浜ゴムはオフハイウェイタイヤへの拡大に舵を切ります。同市場は多品種を取り扱う必要から効率が悪い状況でしたが、メーカーの再編が進んだことで、結果的に好採算市場へと変化していました。またタイヤの交換サイクルも早く、市場の成長率が高いという特徴もあります。

オフハイウェイタイヤの拡大はM&Aを中心に進めました。16年にインドのアライアンスタイヤグループを1300億円超で、23年にはスウェーデンのトレルボルグ・ホイール・システムズを2700億円で買収します。25年2月には、米グッドイヤーから鉱山・建設用車両向けタイヤ事業を1400億円で取得しました。

これら大型買収の結果、タイヤ消費財とタイヤ生産財の売り上げ比率は20年に3:2にまで偏りを解消し、現在は市場構成と同じく1:1となっています。横浜ゴムはオフハイウェイタイヤの主要プレイヤーとなっており、農業・林業用機械では世界首位、産業・港湾用では2位へと成長しました。好採算のオフハイウェイタイヤ市場での躍進が、同社の業績拡大につながっています。