各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、広島銀行のデータをもとに解説。
広島銀行の投信売れ筋ランキングの2022年10月のトップは6月以来5カ月連続で「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド」になった。第2位から第5位までは前月と同じで第2位以下は「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」、「世界経済インデックスファンド」、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」となった。トップ10上位に変動がない中で、前月は第9位だった「りそなラップ型ファンド(安定成長型)」が第6位に上がり、トップ10圏外から「りそなラップ型ファンド(成長型)」が第10位にランクインした。
アクティブファンドの魅力が高まる
広島銀行の売れ筋ランキングでトップを独走する「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド」は、世界の株式、金、債券、リート等への投資を行うバランス型ファンドだが、その時々の市場環境に応じて資産配分比率を大胆に変更して運用している。たとえば、2025年10月末現在の月次レポートによると、資産配分比率は株式に36.2%、債券に23.6%、金(ゴールド)に35.5%という比率ながら、10月は債券への投資比率を16%ポイント高め(前月末は7.6%)、株式と金への比率を下げている。また、為替についても円資産の比率を大幅に引き上げ、前月末3%だったものを10月末には49%にしている。
同ファンドの月次レポートでは、米国景気の下振れ懸念や米国株式の割高感に一定の配慮をするために株式の比率を落とし、高値圏で価格変動が大きくなっている金もポートフォリオのバランスを重視する観点から比率を引き下げたと報告。債券はポートフォリオの分散強化のために組み入れを引き上げたとしている。為替については高市政権の誕生によって積極財政路線が注目された結果、円安・ドル高が進んだ状況を受けて市場の円高リスクに配慮するために円資産を増やしたと説明している。
このような運用者による市場見通しや判断に基づいてポートフォリオを適応させる運用が、先行きの不透明感が強まっている市場で支持されている。このようなアクティブファンドの柔軟性は、同じバランス型ファンドながら、株式と債券への投資比率を半々としながら世界のGDP比率に応じて国内・先進国・新興国への投資比率をルールベースで決定する「世界経済インデックスファンド」とは、異なる価値を提供している。
市場の先行きに対して不透明感が高まってきたため、アクティブファンドである「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」や「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」が高く評価されている背景も同じだろう。「投資のプロの目利きによって市場全体よりも優れた銘柄を選び抜いてしっかり運用してほしい」という思いが、広島銀行の売れ筋ランキングには表れているように感じられる。


