基幹ブランド売上100億円体制へ 株主還元強化、中間配当を実施へ

断行の改革で危機を脱したものの、冒頭のとおり、PBRは 1倍を割り込む水準です。三陽商会はPBRの改善に向け、ROE(自己資本利益率)の改善に取り組むとしています。ROEの改善は、分子である利益の増加と、分母となる自己資本の抑制を同時に進める計画です。

利益の増加はブランドポートフォリオ戦略が中心です。基幹ブランドは商品開発や出店の強化でラグジュアリー領域での地位を確立し、各事業が単体で売上高100億円を目指します。また、チャレンジ領域に位置付けるブランド(サンヨーコート、ビアンカなど)は、収益化に向け引き続き育成を図ります。ブランド成長投資には、28年2月期までの3年間に最大40億円を投じます。

より大きな資金を投じるのが新領域への進出です。子ども服やペット用品といった新カテゴリーへの拡張や、新規自社ブランドの開発、さらには海外展開やM&Aも視野に入れます。3年間の投資額は新領域への成長に最大30億円、M&Aは最大100億円を計画します。

【主な財務目標(~28年2月期)】

・売上高:700億円(25年2月期実績比:+16%)
・営業利益:50億円(同+84%)
・純利益:47.2億円(同+18%)

出所:三陽商会 中期経営計画

自己資本の抑制は株主還元の積極化です。配当金は23年2月期に3期ぶりの復配を果たし、DOE(株主資本配当率)は3年間で2%から4%まで引き上げてきました。今後3年間も維持し、連続増配を計画します。今期(26年2月期)からは中間配当も実施する予定です。さらに、業績に応じた自社株買いも想定します。

三陽商会の配当金(2020年2月期~2028年2月期)
出所:三陽商会 決算短信および中期経営計画より著者作成
 

広報活動も積極化します。22年3月に専任部署として新設したIR・広報戦略部を中心に、情報開示の拡充や投資家との対話を推進します。市場のニーズを取り込むことで企業価値を向上させ、PBRの改善を目指す方針です。