「バーバリー」終了とコロナで経営危機に 断行の改革で執念の復活

まずは概要を押さえましょう。

三陽商会は大手のアパレルメーカーです。自社に製造機能を備えており、ライセンス契約の海外ブランドや自社ブランドを販売します。主力は海外ブランドですが、近年は自社ブランドの強化に注力しており、アパレルメーカーとしての出発点となった「サンヨーコート」をはじめ、新規ブランドの「ベイカー・ストリート」などを展開しています。

【三陽商会の主なブランド】

・ブラックレーベル・クレストブリッジ
・ブルーレーベル・クレストブリッジ
・マッキントッシュ・ロンドン
・ポール・スチュアート
・サンヨーコート
・ベイカー・ストリート

かつての看板ブランドは「バーバリー」でした。しかし現在、バーバリー社との主な契約は「ブルーレーベル」および「ブラックレーベル」に集約されています。

三陽商会は2014年5月、「バーバリー」および「バーバリー・チルドレン」のライセンス契約を終了すると公表します。背景にはバーバリー社が直営での展開に方針転換したことがあるとみられています。当時の主力ブランドを失うニュースに市場は動揺し、株価は翌営業日に前日比で一時20.5%安の急落となりました。

投資家が懸念したように、「バーバリー」の終了は大きな打撃でした。売り上げは急減し、16年12月期は84億円の営業損失に転落します。これは前期比で150億円もの悪化でした。

さらに苦難は続きます。黒字化を果たせないまま、新型コロナウイルスの世界的猛威が三陽商会にも襲いかかりました。財務諸表には「継続企業の前提」に関する文言が記載され、21年2月期には再び89億円もの営業損失を計上します。

結局、営業赤字は、23年2月期の黒字復帰まで6年間続きました。業績の回復を受け、継続企業の前提に関する記載も解消されています。

三陽商会の業績(2014年12月期~2025年2月期)
 
出所:三陽商会 決算短信より著者作成
 

業績回復への道のりは険しいものでした。大規模なリストラに着手し、不採算ブランドからの撤退や希望退職の募集を相次いで実施しました。これにより、16年2月に約1500あった売り場は25年8月末では773とほぼ半減し、臨時雇用も含めた連結従業員の数は25年3月末までの10年間で67.2%減少します。

資産の圧縮にも積極的でした。投資目的の有価証券のほか、連結子会社の株式をも売却します。さらに、三陽商会青山ビルや三陽銀座タワーといった象徴的な自社ビルや、保養所といった不動産も売却します。1000億円を超えていた総資産は急激に減少し、現在は570億円ほどとなっています。

三陽商会の総資産と自己資本比率(2014年12月期~2025年2月期)
 
出所:三陽商会 決算短信より著者作成