老後の生活を支える有力な手段の一つである確定拠出年金(DC)には、個人が加入するiDeCo(イデコ)と企業の従業員が加入する企業型の2つの制度があります。9月16日は2016年に個人型DCの愛称が「iDeCo」に決まった記念日です。両制度の活用と資産運用の必要性を考えるきっかけとして、FinaseeではNPO法人確定拠出年金教育協会の協力のもと、「iDeCo・企業型DCショートエッセイ」コンクールを開催しました。全国の皆さまからご応募いただいた「iDeCo」「企業型DC」に関するご自身の気持ちをつづった力作から、栄えある優秀賞に輝いたニックネーム南風さんの体験談をお届けします。
DCが「人生100年時代を乗り切る」自信に
昭和の時代に就職し、仕事人間だった私にとって定年はずいぶん先のことに思っていたのが実際のところ。定年後の生活など「退職金と年金で何とかなるだろう」という程度に考えていました。
40代後半になったある日、会社による企業型確定拠出年金(DC)制度の講習会が開かれました。そこで退職金の一部を掛金とし、その運用を自分の責任で行い、資産形成を図る制度が始まるとの説明を受けたのです。
これまでとは無縁の世界の話で容易には理解できなかった私は、早速、同僚と飲みながら意見交換することに。運用先などの情報も交換し、いざ運用を始めたのですが、リスクやリターンなどについて理解不足のまま進めた結果、安全運転の運用に落ち着いたのが実情でした。
その結果、たいして資産も増えず、運用期間は満了を迎えます。それでもこのDC資産は公的年金に加えて支給されるということで、何となく安心感がありました。
そんな私にも定年退職の日が迫ってきました。定年後の生活設計も心配で、講習会で金融商品の勉強したり、ファイナンシャルプランナーの資格を取得したりなど、退職金の確実な運用に向けて知識を身につけていったのです。
そうして迎えた60歳。DC年金の受給を開始しつつ、嘱託としての勤務を続け給料も入ってきます。そのうちに年金は「おまけのお小遣い」という感覚になっていき、結局のところ無駄づかいしてしまいました。
65歳からは公的年金の受給も始まり、公的年金は生活費に、DC年金は旅行や趣味の支出にと使い分け、老後生活に潤いを持たせることができています。
DC年金の一部を一時金で受給したり、安全重視の結果、それなりの運用実績となってしまったりなど、振り返ると反省することが多いのが実情です。
退職金は住宅ローンの返済や車の購入、家のリフォームと支出が多く、残った資金で運用に取り組んでいます。
現在は、NISA(少額投資非課税制度、ニーサ)制度の活用や、株価・為替の動向、世界情勢までアンテナを高くして資産を守り育てる努力をしています。仕事を辞めた今では、ボケ防止に役立つと変な自信がついてきました。
会社の制度変更に従ってDC制度に対応してきましたが、今では感謝の気持ちでいっぱいです。この年金のおかげで生活にゆとりが生まれ、人生100年時代を乗り切る自信となっています。
これから定年を迎える方々にも伝えたい、こうした制度を上手に活用して将来に備えてほしいと思います。
