老後の生活を支える有力な手段の一つである確定拠出年金(DC)には、個人が加入するiDeCo(イデコ)と企業の従業員が加入する企業型の2つの制度があります。9月16日は2016年に個人型DCの愛称が「iDeCo」に決まった記念日です。両制度の活用と資産運用の必要性を考えるきっかけとして、FinaseeではNPO法人確定拠出年金教育協会の協力のもと、「iDeCo・企業型DCショートエッセイ」コンクールを開催しました。全国の皆さまからご応募いただいた「iDeCo」「企業型DC」に関するご自身の気持ちをつづった力作から、栄えある優秀賞に輝いた荻原恵造さんの体験談をお届けします。
次世代へつなぐ資産運用のバトン
父から教えられたこと、「これからの時代は、公務員だ」
母から教えられたこと、「これからは、介護の時代よ」
高校の担任から教えられたこと、「いずれ、小学校でも英語の授業が始まる。君は英語の教員免許を取って教師になれ」
ーこれらの教えがあって今の私がいることは否定のしようがない。
北陸地方で英語専科として小学校で働く私は、数年前からiDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)とNISA(少額投資非課税制度、ニーサ)を始めた。これは老後の先行き不安、教育公務員の賃金の限界、所得控除の恩恵について鑑みたためである。
ただ、今まで出会った人々からは、残念ながら教えてもらえなかったことーそれが投資、資産形成の世界であった。一部のお金持ちの道楽とさえ考えていたくらい、どこか懐疑的であった。しかし、朝早くから始まるiDeCoやNISAのテレビCMの勢い、そして政府の構想「資産運用立国実現プラン」などの数々の情報にすっかり狼狽(ろうばい)してしまった私は、勇気を出してその世界に飛び込むことにした。
無知であった私は、何の疑いもなく通常貯金から始めた。「損をしたくない」、その考えが捨てられなかったからだ。やがて、様々な情報媒体から少しずつ知識を蓄えた私は、このうんともすんとも言わない状況、下手をしたらマイナスに落ち込む状況にいら立ち、ある投資信託で資産を運用することにした。
結果は、大成功。みるみる資産が膨らんでいった。今となってはどうしてもっと早く切り換えなかったのか後悔しているほどだ。さすがにトランプショックの時にはかなり動揺したが、着実に最高値を更新している。今のところ、「知は力なり」、フランシス・ベーコンの言葉は私の耳に優しいが、まだまだ勉強不足は否めない。上には上がいて、その人々からすれば、まだまだだろうと思う。これからもアンテナを高くして、この世界で力強く生きていこうと考えている。
私は、まだ幼い息子や娘にいつか教えるだろう。「これからの時代は、投資だ」こうして歴史は紡がれていく。