チームスピリット(証券コード:4397)について、今期および来期にわたる業績予想を紹介する。同社の前身であるデジタルコーストは1996年11月に設立された。 転機となったのは、2010年に法人向けクラウドサービス大手のセールスフォース・ジャパンとAppExchangeパートナー契約およびOEMパートナー契約を締結したことである。 これを機にクラウドサービス事業へとかじを切り、2012年4月に働き方改革プラットフォーム「チームスピリット」の提供を開始、同年9月には商号をチームスピリットへ変更した。 

2018年8月には東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たした。 近年では、2024年4月に「チムスピ エンタープライズ」シリーズ、同年6月にAI議事録サービス「Synclog」、7月にはBIツール「チムスピ ピープルアナリティクス」をリリースするなど、マルチプロダクト化を加速させている。

同社グループの事業は、働き方改革プラットフォームであるチームスピリットの提供を主としたSaaS事業の単一セグメントである。チームスピリットは、勤怠管理・工数管理・経費精算・電子稟議・カレンダー・SNSといった、従業員が日常的に利用する複数の機能を一体化したクラウドサービスであり、従来は個別のシステムで管理されていたデータを一元化し業務活動記録として可視化・分析可能とすることで、企業の生産性向上や高度な内部統制の実現を支援する。

サービス基盤として世界的なクラウドプラットフォームとして知られる米セールスフォースの「Lightning Platform」を活用している点も大きな特徴である。これにより堅牢なセキュリティと高い拡張性が自社での大規模投資を行わずに実現し、金融機関やグローバル企業といった要件の厳しいエンタープライズ顧客から選定される要因となっている。これらの安定したストック収益に加え、スポットサポートや初期導入費用などのフロー収益もある。

同社は従業員1000名以上の大企業、すなわちエンタープライズ顧客の獲得に経営資源を集中させている点が最大の特徴である。日本特有の複雑な労働法規への深い理解と迅速な対応が求められるため、海外のSaaSベンダーにとっては参入障壁が高い。加えて頻繁な法改正や多くの大企業が抱える既存システムの老朽化もSaaSへのリプレイス需要を喚起しており、同社にとって強力な追い風となっている。

同社は海外展開も進めているが、サービスの特性上、日系企業の海外拠点よりむしろ日本国内で活動する外資系企業との方が相性は良いと言える。これは、海外の勤怠管理システムでは対応が困難な日本の労働法規への準拠が日本で事業を行う上で必須となるためである。また先述の通りサービス基盤としてセールスフォース社のLightning Platformを活用しているが、契約以前はセールスフォース製品を利用していなかった企業が顧客の大半を占めており、同社のサービスが提供する経営課題解決への価値が独立して評価されていることを示している。