「ベンチマーク」関連では一部で“炎上”したファンドも…

たとえば今年2月、農林中金バリューインベストメンツの「おおぶねJAPAN」は、それまで運用レポートに掲載していた参考指数としての「配当込みTOPIX」の推移を、基準価額推移のグラフから削除しました。この事実が一部で炎上しましたが、それ以上に看過できない事例もあります。

さわかみ投信の「さわかみファンド」がそれです。同ファンドは1999年8月から現在まで、約26年にわたって運用されているアクティブファンドですが、当初1万円の基準価額でスタートしたものが、2025年7月22日時点で3万8679円にまで値上がりしました。約3.8倍です。この事実をもって「値上がりしているからいいファンドだ」と、SNSや掲示板に書き込んでいる人たちもいます。

その認識は本当に正しいのでしょうか。

さわかみファンドの運用報告書やレポートには、参考情報としてTOPIXなどの指数は、掲載されていません。運用報告書の注記によると、「当ファンドの運用方針に対して適切に比較できる指数がないため」と、その理由が書かれています。

それは恐らく、4月末時点で組み入れられている145銘柄のうち、11銘柄が外国株式であり、だからTOPIXなどの日本株指数を参考指数にはできない、という理屈なのだと思いますが、4月末時点の純資産総額である3908億3200万円に占める外国株式の比率は、評価額ベースで2.89%です。

ポートフォリオの半分が外国株式で占められているのであれば、「適当なベンチマークが存在しない」という理屈も通用しますが、3%にも満たない程度では、実はベンチマークと比較されたくないがための“方便”として外国株式を組み入れているのではないか、と受け止められかねません。

では、さわかみファンドの運用成績を、TOPIXと比較してみましょう。2011年8月17日を起点にして、さわかみファンドの基準価額と、税引後配当込みTOPIXの成績を比べると、さわかみファンドの運用成績は、2025年7月18日時点で、税引後配当込みTOPIXに対して26.83%も負けています。

しかもこの間、約14年間にわたり、一度たりとも税引後配当込みTOPIXを上回っていません。

「当ファンドの運用方針に対して適切に比較できる指数がない」とするのも一理あるのかもしれませんが、ほぼ日本株のポートフォリオで約14年間、税引後配当込みTOPIXに負け続けているアクティブファンドが、年1.1%の信託報酬を徴収し続けているという事実を、さわかみファンドの保有者は、よく認識した方が良いのではないでしょうか。