<前編のあらすじ>

豊さん(仮名、58歳)は30年以上会社員として働いてきましたが、5年前に退職して自営業者になりました。国民年金保険料の負担を軽減するため、「2年分前倒しで納めれば、保険料の1カ月分相当が安くなる」という事実に気づき、2年前納を活用して2025年度と2026年度分の保険料を既に納付していました。

しかし、事業が順調に成長し、税理士から法人化を勧められるようになります。法人化すると厚生年金に加入することになりますが、豊さんは前納した保険料のことが気になり始めます。「2025年度と2026年度の2年分の国民年金保険料はもう先に払っちゃった……厚生年金に加入できたとして国民年金の保険料はどうなっちゃうんだろう」と不安を抱え、年金事務所に相談に向かいます。

●前編:【厚生年金加入で前納分の国民年金保険料はどうなる? 法人化を考える58歳自営業男性、直面した「年金切り替えの問題」】

前納した国民年金保険料は還付の対象に

厚生年金に加入すると、厚生年金保険料が発生することになります。厚生年金加入については豊さん個人としてではなく、設立する法人としての手続きをすることになります。

しかし、厚生年金加入後の期間も含めた国民年金保険料を既に前納しています。その重複する期間については、厚生年金優先となって厚生年金被保険者期間として記録され、将来の年金もそれを基に基礎年金と厚生年金の2階建てで計算されることになります。そのため、国民年金第1号被保険者として既に納付した国民年金保険料は還付を受けることができます。

豊さんは2025年7月から厚生年金に加入することを考えています。2025年7月以降は厚生年金の被保険者期間となります。2年前納した保険料のうち2025年7月分~2027年3月分の合計21カ月分の国民年金保険料が還付の対象になるでしょう。

なお、豊さんはあと2年で60歳になります。第1号被保険者で国民年金保険料の納付対象となるのは60歳になる月の前月分まで。60歳以降国民年金に任意加入できれば引き続き国民年金保険料の納付もできますが、それでも65歳になる月の前月分まで(あるいはその前に老齢基礎年金が満額に達するまで)となります。一方、厚生年金に加入すると60歳以降でも加入し、その保険料は最大で70歳になる月の前月分までが対象になります。