どうしてトランプ大統領は突然、90日の関税停止を発表したのか

株式投資をしている人たちの中には、トランプ米大統領を恨んでいる人も少なくないかもしれません。

あの、「相互関税」の中身が発表された4月2日の翌日から、株価は急落へと転じたからです。S&P500の終値は、2日の5670.97ポイントから、安値をつけた7日の4835.04ポイントまで14.74%も下げました。

同時に、日本株も急落しました。日経平均株価は今年に入ってから調整色を強めていたとはいえ、4月2日の3万5725円から下げ足を速め、4月7日には3万1136円まで12.85%も下げたのです。

相互関税とは、貿易相手国が自国製品に高い関税を課している場合、その対抗措置として同じ率の関税率を、貿易相手国からの輸入品に課すという考え方です。

「米国はさまざまな国からどんどんモノを買っている。でも、米国のモノはどの国もあまり買ってくれない。それは、米国からの輸入品に高い関税をかけているのと同時に、米国製品を流通しにくくするような非関税障壁が設けられているからだ。それは誠にけしからん話なので、米国に対してたくさん輸出している国には高率の関税をかけて、貿易不均衡を是正する」という話です。

そのため4月5日から、すべての国・地域を対象に一律10%の関税を課す措置を発動しました。

そして、これに先駆けて2日に公表した、「日本に対して24%を課す」という関税は、米国の貿易赤字額が大きな国・地域を対象にして、一律10%ではなく、それを上回る相互関税を適用する、というものです。その発動が4月9日午前0時1分でした。

ところが同日、トランプ大統領はSNSで、相互関税に対する報復関税を発表せず、米国との交渉を求めた国・地域を対象にして、90日間の相互関税停止を発表しました。

ちなみに、この停止後も、一律10%の相互関税はそのまま適用されます。部分的停止になったのは、その上乗せ部分です。たとえば日本の場合だと、一律10%を含めて24%の相互関税が適用されることになっていましたから、10%の相互関税は適用され、そこに上乗せされた14%部分の適用が、90日間延期されるということです。