資産形成のうえで投資信託は合理的だが、個別株投資にもトライする価値はある理由
資産形成にもさまざまな方法があります。
預貯金、債券、株式、投資信託、あたりが資産形成のツールとして適当かと思われますが、これから社会人になる人にお勧めしたいのは株式(個別株)投資です。なぜなら企業経営の勉強になるからです。
投資先を選ぶに際して、「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」は通用しません。景気や金利、為替レート、投資先候補企業が展開しているビジネス領域の注目度など、外部環境を検証しながら、投資先候補企業の貸借対照表で財務健全性を、損益計算書で収益性を、キャッシュフロー表で資金繰りの状況をそれぞれ分析しつつ、最近では企業理念なども重要な投資判断材料になっています。
これらの情報にすべて目を通したうえで、投資する価値があると判断したら、次は現在の株価の位置をチェックします。どれだけ将来性があるビジネスを行っている企業でも、株価が割高な水準にまで買われていたら、ちょっとしたネガティブなニュースが報じられた瞬間、株価はいとも簡単に急落してしまいます。そのような状況に巻き込まれないようにするためには、これまでの株価の推移を示すチャートをチェックするのと同時に、PERやPBRなどの株価指標をチェックします。
ただ、東京証券取引所にはたくさんの企業が株式を上場しているため、最初の絞り込みで苦労するかも知れません。現在、東証に上場されている銘柄は3800程度ありますから、ここから1銘柄、あるいは2銘柄を選ぶとなると、どこから見ていけば良いのか分からなくなるでしょう。なので、何か“ふるい”にかける基準のようなものが必要です。
それは、たとえば皆さんが就職活動で候補にした企業でも良いと思います。本命だった企業から内定がもらえずに悔しい思いをしたのであれば、その企業を投資先候補に入れても良いでしょう。企業は株主のものなので、単元株で保有すれば、自分に内定をくれなかった企業に“働いてもらって”、そのうえ利益の一部を配当金として受け取ることができますし、株主総会に参加して意見を述べることもできます。いささかひねた考え方ではありますが、少しだけ痛快ではないでしょうか。
では、投資信託はどうでしょうか。フレッシャーズである皆さんのお財布事情を考えると、100株をひとまとめにして買わなければならない単元株投資は、ややハードルが高いかも知れません。
その点、投資信託であれば、少額資金でもたくさんの銘柄に分散投資したのと同じ効果が得られるので、合理的と考えられます。そのうえ積立で投資信託を買っていけば、単元株で1、2銘柄に投資するよりも、リスクを軽減できます。
しかし、それでも社会に出たばかりの方には、単元株で個別銘柄に投資することをお勧めします。それは前述したように、株式投資を通じて学べることが多いからです。確かに投資信託は、資産形成のツールとしては合理的です。
でも、投資先候補企業の貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー表などの数字をチェックして、企業の経営の中身を学ぶようなことはできません。確かに個別株投資の方がリスクはありますが、こうしたさまざまな観点から検証をしたにもかかわらず、仮に損をしたとしても、それは企業を理解するための勉強代だと思えば良いのです。