近年、インドの存在感がますます高まっています。

人口は14億人を超え、世界最多。国際通貨基金(IMF)の推計では、2025年中に名目GDPが日本を抜き、世界第4位になる見通しです。日本の国際的な影響力が相対的に低下するなか、投資先としても成長著しいインドが注目を集めています。

そこで今回は、インドを知るうえで欠かせないカースト制度・人口・宗教などについて、第一生命経済研究所 経済調査部主席エコノミストの西濵徹氏に解説してもらいます。(全3回の3回目)

●第2回:【インド】このまま人口は増えそうだが…一方で見逃せない経済成長に潜む“少子化の兆し”

※本稿は、西濵徹著『インドは中国を超えるのか』(ワニブックスPLUS新書)より、一部を抜粋・再編集したものです。

モディ政権の「ヒンドゥー至上主義」

モディ政権を支える最大与党BJPは「ヒンドゥー至上主義」を党是に掲げ、その支持母体となっている民族義勇団(RSS)の姿勢を反映する形でイスラム教徒を中心とする他の宗教の教徒に対して厳しい姿勢を採る動きがみられます。

憲法においては信仰の自由とすべての個人が宗教を自由に信仰、実践、布教する権利と有すると規定されていますが、BJPなどヒンドゥー至上主義を掲げる政党が多数派を占める州では、改宗を制限する旨の法律が定められる動きもあります。

さらに、2019年には隣国であるアフガニスタン、バングラデシュ、パキスタンの3カ国を逃れてインドに不法入国した移民に国籍を与える改正国籍法を制定しましたが、その対象を3カ国において宗教的なマイノリティーであるヒンドゥー教とパーリ教、シーク教、仏教、ジャイナ教、キリスト教に限定しており、事実上イスラム教徒の排除を目指したものとみられました。

制定された直後、全土において反対デモの動きが活発化したことを受けて施行は先送りされましたが、モディ政権は2024年の総選挙を前にナショナリズムの高揚を目的とする形で施行を決定するなど、様々な形で圧力を強める動きが顕在化しています。よって、モディ政権の下では外形的にみれば民主主義の制度を維持しているものの、その内実を巡っては様々な面で強権姿勢を強めているとの批判が高まる動きもみられます。